豊穣の女神ケレスを超解説!誘拐された娘を必死に探す母

こんにちは!

今回は、ギリシャ神話に登場する農業、豊穣の神ケレスを解説します。

早速見ていきましょう!

ケレス(デメテル、シアリーズ)

アントワーヌ・ヴァトー《ケレス(夏)》1717-1718年

ギリシャ名:デメテル、ローマ名:ケレス、英語名:シアリーズ

アトリビュート:小麦(穀物)、松明

農業、収穫、貧者、働き者の女神です。

ケレスは、「小麦のような」金色の髪が印象的な美しい女神です。

農業の神

ケレスは牡牛に姿を変えたゼウスに犯され、ペルセポネを産むことになりますが、以前はむしろ女性に興味がありました。

ケルキラ島(コルフ島)のニンフのマクリスを寵愛し、彼女への愛から、島のティタン神族に種まきと収穫の技術を教えると、人間の間で農業が広まりました。

娘が誘拐される

アントワーヌ・フランソワ・カレ《ゼウスに抗議するデメテル》1777年

ある日、ケレスの美しい娘ペルセポネがシチリア島で水仙を摘んでいると、地面が裂け、冥界の神ハデスが現れました。

夜のように真黒な馬の戦車に乗ったハデスは、ペルセポネを闇の帝国へ連れ去って我がものにしようと、さらいに来ました。

絶望したケレスは錯乱しながらも、9夜9日かけて探しまわり、両手に松明を持って、すれ違う人に片端から娘を見なかったか尋ねました。

恩はきっちり返す

さらわれた娘を必死に探すケレスの姿は、まるで年老いた物乞いのようでした。

ある日、エレウシスの町に出かけ、助けを求めたところ、王に手厚く迎えられたことから、小麦を贈り、王子たちに農業の奥義を教えて謝意を示しました。

以降、エレウシスでは、毎年9夜9日かけてこの「神秘」を祝い、ケレスに彼女の聖獣ブタを捧げました。

季節ができた理由

フレデリック・レイトン《ペルセポネの帰還》1891年頃

ハデスに娘を連れ去られたと知ったケレスが死んだようになると、植物の生育も止まり、人間は冬と飢えに悩まされることになりました。

こうした惨状を前にゼウスも譲歩せざるおえず、兄ハデスにペルセポネを戻すよう伝えます。

しかし、ずる賢いハデスは、すでに6粒のザクロの実をペルセポネに食べさせていました。

冥界の食べ物を口にした者は、もう地上に戻ることができません。

結局、ゼウスが仲立ちし、ペルセポネは。6か月は地上で6か月はハデスと過ごすことになりました。

こうして季節が生まれ、ペルセポネのいない6か月は冬となりました。

ほぼ全ての食物をカバーする神

ケレスは、ほぼ全ての食物をカバーする女神です。

ギリシャ人の主食はパンだったため、食事の支度を担う女性たちは、アテナイで彼女を崇拝していました。

ケレス信仰に男性の立ち入りは厳禁で、秘密をもらした女性は死罪に処されました。

喜劇詩人アリストパネスも信仰内容については知りませんでしたが、喜劇『女だけの祭』を著し、彼女たちを嘲笑いました。

シリアルの語源

バルダッサーレ・ペルッツィ《ケレス》1510-1525年

古代ギリシャの経済は、オリーブ、ぶどう、穀物(大麦、小麦)の、いわゆる地中海3大製品に大きく頼っていたため、ケレスも非常に重要視されていました。

都市の繁栄の鍵を握る女神への深い信仰心は、現代にもその跡を残しており、朝食に人気のシリアルの語源はケレスです。