こんにちは!
今回は、ボナールが描いた妻のお風呂の絵を紹介します。
早速見ていきましょう!
ボナールと妻マルト
ピエール・ボナール撮影 マルトの写真 1916年頃
名前と年齢を詐称
ピエール・ボナール《葡萄を持つ女》1911年
2人の出会いは1893年、ボナール26歳、マルト24歳のときでした。
そのときマルトは16歳のマルト・ド・メリニーだと名乗っており、ボナールが彼女の本名(マリア・ブルサン)と本当の年齢を知るのは、32年後の正式に結婚したときでした。
ボナールは、マルトをモデルに多数の絵を描き、マルトの死後も彼女の絵を描き続けました。
と、これだけ聞くと、「愛妻家〜!」という感じがしますよね?
実際に「愛妻家ボナール」というイメージが(世間的には)ついている画家なのですが、それだけとも言い切れないところがあります。
年若い愛人の存在
ピエール・ボナール《庭の若い女性たち》1921-1923、1945-1946年
というのも、ボナールはマルト以外にも愛人がいました。
その一人はマルトの若い友人ルネ・シャンティで、ボナール50歳のときに出会いました。
上の絵の金髪の女性がルネ、右がマルトです。
この絵をマルトが見つけて激怒したそう。
ボナールはこの絵を長年大切に所有し、マルトの死後加筆し完成した作品でした。
ルネとボナールは一緒にローマにも旅行に出かけていました。
マルトはルネに大変嫉妬し、ボナールに結婚を迫ったとも、ボナールを健気に待ち続ける彼女に胸を打たれたともいわれていますが、どちらにせよ、1925年、ポナール58歳、マルト56歳ときに結婚しました。
しかしその1ヶ月後、ルネが自殺してしまいます。彼女は31歳でした。
彼女が死んだ場所はなんと浴槽、そして第一発見者はボナールでした。
そして、浴槽に横たわる裸婦が描かれるようになったのは、この事件の後からでした。
浴槽に浸かっている絵は、オフィーリアや石棺のようにも見え、溺死、つまり死を連想させます。
2人だけの生活
マルトはルネのこともあり、ボナールが女性モデルを使うことを嫌がりました。
そんなマルトの気持ちを尊重し、女性モデルの使用を控えるとともに、同じナビ派の画家仲間からも離れていきました。
嫉妬深く、人付き合いの苦手な彼女への配慮でした。
そして、南フランスのル・カンネに別荘を購入し、2人だけの生活が始まりました。
これ以降、絵のモデルはほとんどマルトだけになりました。
高価なバスタブをプレゼント
お風呂好きなマルトのために、ボナールは猫足付きのバスタブをプレゼントしました。
当時、お湯の出る浴槽は、非常に高価なものでした。
ボナールの妻のマルトは持病の神経症を和らげるために、1日に何度も入浴していたこともあり、彼女をモデルに多数の「浴女」を描きました。
西洋絵画において、「浴女」は、伝統的なテーマでした。
神話や聖書に登場する女神や聖女(バテシバやスザンナなど)の水浴場面を描くのが王道でした。
近代以降では、ドガが実在する女性を描写したシリーズなどを制作しています。
ボナールは写真も活用して作品を制作しました。
職業モデルがポーズをとるのとは違い、日常的でプライベートな空間のマルトの姿が描かれています。
バスルームシリーズ
ピエール・ボナール《体を拭く裸婦》1907年
ピエール・ボナール《逆光の裸婦(オー・デ・コロン)》1908年
ピエール・ボナール《化粧台》1908年
ピエール・ボナール《化粧台》1908年
ピエール・ボナール《タンスの前の裸婦》1909年
ピエール・ボナール《全身鏡》1910年
ピエール・ボナール《化粧台と鏡》1913年
ピエール・ボナール《浴槽の裸婦》1913年
ピエール・ボナール《化粧》1914年
ピエール・ボナール《青い手袋のヌード》1916年
ピエール・ボナール《後ろ姿の裸婦》1916年頃
ピエール・ボナール《浴槽、ブルーのハーモニー》1917年
ピエール・ボナール《浴槽でしゃがんでいる裸婦》1918年
ピエール・ボナール《浴槽のマルト》1919年
ピエール・ボナール《ピンクのヌード、影付きの頭部》1919年頃
ピエール・ボナール《後ろから見た入浴女》1919年頃
ピエール・ボナール《窓際の裸婦》1922年頃
ピエール・ボナール《立っている裸婦》1924年
ピエール・ボナール《浴槽の裸婦》1924年頃
ピエール・ボナール《浴槽の裸婦》1925年
ピエール・ボナール《浴槽》1925年
ピエール・ボナール《浴槽から出てくる女性》1925年頃
ピエール・ボナール《浴槽の裸婦》1931年
ピエール・ボナール《裸婦》1931年
ピエール・ボナール《立っている裸婦》1931年
ピエール・ボナール《化粧中の女性》1934年頃
ピエール・ボナール《浴槽》1935年
ピエール・ボナール《浴槽の裸婦》1936年
ピエール・ボナール《浴槽の裸婦》1940年
ピエール・ボナール《浴槽の裸婦》1940-1946年
ピエール・ボナール《ミトンの手袋》1942年