こんにちは!
今回は、ギリシャ神話に登場する冥界の神ハデスを解説します。
早速見ていきましょう!
ハデス(プルート、プルートー)
ピーテル・パウル・ルーベンス《オルペウスとエウリュディケ》1636-1638年
ギリシャ名:ハデス、ローマ名:プルート、英語名:プルートー
アトリビュート:二叉槍、番犬ケルベロス
冥界の王、死そして豊穣の神です。
ゼウスの兄で冥界の神ハデスは、3つの頭を持つ番犬ケルベロスと共に、この世とあの世を分ける川ステュクス川を渡ってくる人間の魂を見張っていました。
透明マント
ハデスは父クロノスに飲み込まれ、弟ゼウスに助けられました。
ゼウスは吐剤を父に飲ませ、兄弟姉妹を吐き出させました。
怒ったクロノスは、兄弟であるティタン神族を動員して子供たちに立ち向かいましたが、子供たちはキュクロプスを解き放ち、撃破しました。
感謝したキュクロプスはハデスに素晴らしい贈り物をこしらえました。
犬の皮でできた帽子で、それをかぶると姿を消せるため、ハデスは不可視神とも呼ばれるようになりました。
誘拐犯
ピーテル・パウル・ルーベンス《ペルセポネの略奪》1636-1637年
兄弟たちはティタン神族に勝利を収め、ハデスは闇の王国の分け前としてもらい、そこから決して出ることはありませんでした。
引きこもれば引きこもるほど、結婚の可能性も低くなります。
彼が冥界を出たのは、若くて美しい姪のペルセポネを力ずくで奪ったときの1度だけでした。
無邪気なペルセポネは、シチリア島で水仙を摘んでいたところ、ハデスにさらわれてしまいます。
ペルセポネの母で農業と収穫の女神デメテルは、娘の父でもあるゼウスに「娘を返してくれなければ、農作物が育たないようにする」と警告しました。
四季がある理由
ウォルター・クレイン《ペルセポネの略奪》1877年
ペルセポネの誘拐事件後、自然界は大変な事態になりました。
冬がいつまでも続き、人間たちは飢えに苦しみました。
とうとうゼウスは譲歩そ、ペルセポネを返すようハデスに命じましたが、ずる賢いハデスはすでに先手を打ち、彼女に6粒のザクロの実を食べさせていました。
冥界の食べ物を口にした者は、死者の国から出ることができません。
結局ゼウスは、ペルセポネを1年のうち6か月間は地上に戻し、6か月間はハデスと過ごすよう命じました。
以来、デメテルは、毎年6か月間、娘の不在を嘆き、その間に冬が来るようになりました。
冥界の世界
モンス・デジデリオ《冥界の風景》1622年
古代において「冥界」とは、いわゆる地獄と天国の2つからなっています。
地獄は2つの壁と炎に囲まれたタルタロス、天国はキュクロプスの壁の後ろに位置するエリュシオンの園でした。
エリュシオンの園は、英雄や徳の高い人々のための場所で、彼らは死後、ここで永遠の休息を享受することができました。
ハデスとペルセポネの支配する冥界に行くには、渡し守カロンにお金を払い、アケロン川を渡る必要があり、払えない者は100年待たねばなりませんでした。
あえて良い名で呼ぶ
ギリシャ人は、冷酷なハデスを恐るあまり、その名を直接口にすることはなく、「富める者(ギリシャ語で「プルートン」ラテン語で「プルトー」)」と呼び、豊穣の角を持たせました。
あえて響きの良い名で呼ぶことで、ハデスに取り入ろうとしたのかもしれません。
糸杉
ヨーロッパの多くの墓地で植樹が許可されているのは、糸杉だけです。
根が垂直に張る数少ない木の1つで、死者の邪魔をしないと考えられているためです。
ギリシャ人はこのことをよく知っており、糸杉を「ハデスの木」とし、ハデスに捧げものをするときは、神官は糸杉の冠をかぶりました。
ちなみにハデスへの捧げものは、夜間、黒色の動物のみという決まりがありました。
冥王星
太陽系の中で最も寒い星が、1930年に発見された冥王星です。
ハデスのローマ名から、欧米では「プルトン」、「プルート」と呼ばれています。
うすら寒い冥界のような冥王星に似つかわしい命名です。
さらに冥王星の衛星には、番犬ケルベロスとステュクス川を渡る死者の魂の渡し守カロンの名がついています。
厳密には、ハデスがオリュンポス12神のメンバーではないように、冥王星も2006年以降、惑星とは見なされていません。