ジン横丁とビール街 生と死をイメージさせる対になったホガースの絵を解説!

こんにちは!

今回は、ホガースの『ビール街』と『ジン横丁』について解説します。

早速見ていきましょう!

ビール街とジン横丁

『ビール街』1751年

『ジン横丁』1751年

『ビール街』と『ジン横丁』は、下層階級に広がるジンによる社会問題を改善しようと作られた作品です。

当時、ジンは安価で簡単に酔えるお酒だったため、貧困層に非常に人気がありました。

しかし、粗悪なものも多く、中毒性もあり、体を壊す人が大量に出て社会問題となっていました。

そこで、イギリス政府はジン規制法を施行しますが、効果はなし。

そんなときに作られたのがこの作品です。

この作品は、酒場やカフェなどに貼られ、いろんな人が目にしたそう。

ビールは健康!ハッピー!、ジンは悪!悪!悪!という内容の作品なのですが、そもそもビールが高くて買えないから消去法でジンを飲んでいる面もあるので、根本を解決しないとどうにもならない話ではありますが…。

ジン横丁

『ジン横丁』1751年

外国産の安いジンが入ってきたことによって、堕落荒廃を描き、その恐ろしさを伝えています。

ジン狂いのロンドン市民が描かれています。

 

赤ちゃんが落ちていきます。

中央に座るボサボサ頭の女性は、授乳中…だったはずが、嗅ぎタバコをつまむことに気を取られ、自分の腕から子供が消えていることにも気が付いていません。

酔っ払ってもうなにもわからなくなってしまっているのでしょう。

足には梅毒の症状が出ていることから、売春婦だとわかります。

 

軍服を来ていることから、旧軍人だと分かります。

餓死寸前、目も見えているのか見えていないのか…。

ジンのコップを片手に、カゴの中から「ジンはやめよう!」というパンフレットが見えています。シュール。

 

「KILMAN DISRILLER」その名の通り、人を殺す蒸留酒製造業者、ジンの酒造所だと分かります。

 

その店の前でジンを飲む2人の少女…。

その下、母親が赤ちゃんに無理やりジンを飲ませています。

水よりジンの方が手に入れやすいから飲ませているのか、泣き止まないからジンを飲ませているのか…。

 

矢と球体が3つついた看板は質屋です。

これは金貸し業もしていたメディチ家のマークからきています。

渋い顔をした店員に、持ってきたものの品定めをしてもらっている2人。

生活必需品っぽいのに質入れしてしまっていいのでしょうか…。

そこまでしてでもジンを飲むお金が欲しいと。

 

完全にどうにかなっちゃってる男がいますね。

彼の右手には、大きな釘のような棒、そして赤ちゃんが突き刺さっています。

横から赤ちゃんの母親らしき人物が驚いた表情で慌てて追いかけています。

手前の母親の腕から落下している赤ちゃんも、ちょうどお腹のあたりに階段の手すりがきていて、突き刺さっているように見えますよね。

形を反復して強調することによって、ジンによって犠牲になるのは子供だと伝えています。

 

サイズの合わない棺桶に埋葬されている女性の近くには彼女の子供が。

放置されているのでこの子も先は長く無いことがわかります…。

『ジン横丁』では、ジンによって、理性を失った大人の犠牲になる子供たちがクローズアップされています。

ホガースは子供時代の影響からか、不遇な子供に対して思うことが多かったのかもしれません。

彼は孤児養育院の院長をしたり、昔自分が通っていた途中に閉鎖してしまった学校を再建したりしています。

ビール街

『ビール街』1751年

英国産のビールを飲みながら、生き生きと生活する様子が描かれています。

ジン横丁と比べて、建物もしっかりしていて、みんなふくよかで、楽しげですね。

ジン横丁では繁盛していた質屋も、ビール街では看板が下向きになっていることから、繁盛していないよう。

みんなが真面目に働き、労働で得たお金で、国産のビールを楽しむという、何から何まで全く違う絵です。

 

そんなビール街にも、ジンの影が…?

画家が描いている看板がジンっぽいですよね。

さらに看板の横にぶら下げてあるのもジンのボトルっぽいです。

健康的で明るいビール街にも、ジンの脅威が潜んでいるということを表しているのかもしれません。

ちゃんと働いて、ジンではなくて、ビールを飲もう!ということですが、

ビール街にもジンが存在していることから、「怠惰」な心はどこにでもある、だから今は大丈夫でも気をつけよう!ということを伝えたかったのかもしれません。