こんにちは!
今回は、ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂天井画について解説します。
早速見ていきましょう!
システィーナ礼拝堂天井画
世界で一番小さな国、バチカン市国のバチカン宮殿内に建てられたのが、システィーナ礼拝堂です。
この礼拝堂はたびたびニュースにもなる「コンクラーベ」、つまり新教皇を選出する選挙の場としても有名です。
1508〜1512年にその礼拝堂の天井画を描いたのが、33歳の天才ミケランジェロです。
天井画だけで、なんと約300人の人物像が描かれています。
今から500年以上前、どうやってこの天井画描いたと思います?
なんと、足場を組んで、立ったまま(もしくは仰向けで)描いたんです!首おかしくなりそう…
手直しの出来ないフレスコ(顔料+水)で描かれています。
この技法は難易度が高いのですが、耐久性も高いので、この技法で描いてくれたおかげで、今でも綺麗な状態で作品が残っています。
天井画を描くにあたり、ミケランジェロは膨大な数の素描を残しました。
しかし、その多くは画家自身によって処分され、600点ほどしか(も?)残っていません。
当時は、女性を描くために男性モデルを使うことは一般的だったことから、この天井画の女性もムキムキに描かれています。
元々は違う絵が描かれていた
ミケランジェロが制作するより20年も前に、ボッティチェリやペルジーノをはじめとするルネサンス期の芸術家たちが既にシスティーナ礼拝堂の壁画を依頼され、制作していました。
「システィーナ」とは、この建物を建立した教皇シクストゥス4世の名前からきています。
野心家で強い権力を持った教皇ユリウス2世(シクストゥス4世の甥)は、ミケランジェロに天井画を描き直させるべきだと強く主張しました。
当時、天井には既に星空を模した絵が描かれていました。
全くやる気なし
ミケランジェロは、自分は彫刻家であって画家ではないと思っていたので、当初は全く乗り気ではありませんでしたが、ローマ教皇ユリウス2世の命令には逆らえません。
何でこんなことを自分がしなくてはならないのかと不満たらたらでしたが、それでも一旦引き受けたからには手抜きせず仕事し、4年かけてほぼ独力で完成させました。
自ら設計した特別な足場を組み、制作に取りかかりましたが、当初雇った6人の助手は早々に追い払ってしまいました。
礼拝堂は幅13メートル、奥行き40メートル、床からの高さは一番高いところで20メートルもあります。
制作の間、通常どおり下でミサも行うというので、天井に網を張り、ゴンドラに乗って仰向けでの過酷な作業でした。
夏の暑さ、冬の寒さにも耐えながら、およそ550平方メートル強の天井面(湾曲しているので1000平方メートルとの説も)を60以上のシーンに区分けして、300人を超える登場人物とそれぞれにふさわしい背景を描き込んでいきました。
天井画の内容
人類にはイエス、そして神の救済が必要!!!だから信じて祈りなさい!!!
です。
それを説明するために、人類の苦難と堕落を天井画で表現しています。
システィーナ礼拝堂公式HPで360°バーチャルツアーが出来るのですが、圧倒されました…。
これ、生で見たら、自分の意思とか関係なく神の存在を信じちゃいそうなくらいすごい。
天井中央部分『創世記』
光と闇の分離
「光あれ」(創世記1章3ー5節)。
ミケランジェロの描いた第1場面は、聖書における天地創造の物語です。
神が頭上真上に描かれています。
腕をいっぱいに伸ばした神は、嵐のようなうねりの中で体をよじっているように見えます。
力強い腕が、光と闇を分離しています。
太陽、月、星、植物の創造
神の創造の3、4日目の様子が描かれています。
背を向け、ローブをなびかせているのは、地球上に植物や果物を創造している神です。
左のあごひげを蓄え腕を伸ばした神は、金色に輝く球、つまり太陽を指差しています。
美しく立体的に描かれたもう一方の腕は、後方の月を指差しています。
月は、天にある第2の光です。
大地と水の分離
アダムの創造
システィーナ礼拝堂で最も有名なシーンです。
指と指が触れ合いそうなこのポーズは、よくパロディされていますよね。
白髪の厳然とした父なる神は力に満ち、肉体的・精神的エネルギーをアダムに向けて放っています。
アダムのたくましい体と整った顔立ちは、神に授けられた美を具現化しています。
解剖学的正確さと若さに満ちた優美さは、ミケランジェロがこれより前に制作した《ダビデ像》の完璧な姿を思い起こさせます。
イヴ(エヴァ)の創造
天地創造の第6日目に、神は「自分の形に」アダムを創造しました。
アダムを深い眠りにつかせた神は、彼のあばら骨を1本取り、そこから最初の女、イヴを創造しました。
この絵ではイヴは、神に向けて手を差し伸べながら、アダムの陰から姿を現しています。
マントを着た神はイヴに、立ち上がるようにと手で指図しているように見えます。
原罪と楽園追放
創世記の2つの場面が描かれています。
左側には、エデンの園にいるアダムとイヴと力強い女の姿で木に巻きついている蛇が描かれています。
蛇は「善悪の知識の木」になっている禁断の果実をイヴに勧めています。
右側には、罪にさいなまれ、恥じらい、悔やんでいる2人が、剣を持った天使にエデンの園から追放され、荒涼とした風景へと向かう場面が描かれています。
ノアの燔祭
大洪水
大混乱を描いたこの場面には、神が人間の堕落の罰として起こした洪水から避難しようとしている人々が描かれています。
背景にはノアの方舟が見えます。
前景には高い土地に逃げようとする家族が描かれ、彼らの髪や服は強風にあおられており、カオスとパニックに支配されています。
ノアの泥酔
創世記によると、ノアはブドウを栽培し、自分の作ったワインに酔って裸のまま眠ってしまいました。
ノアの息子の1人がそんな父親を見つけ、2人の兄たちを呼びました。
この絵には、3人の息子たちが目をそらしながら、父親の体に覆いを掛けようとしています。
泥酔しているノアを描くのに、ミケランジェロは教皇の所有する彫刻にヒントを得たのかもしれません。
というのも、ノアのポーズが古代ローマの川の神の姿に似ているからです。
ノアの息子たちもほとんど同然で、彼らのたくましい体つきは彫刻のようです。
預言者と巫女
この部分には、当初、十二使徒が描かれることになっていました。
しかし、教皇は、天井画を鮮やかな色の絵具や金泥を用いて色彩豊かなものにすることを望みました。
そこでミケランジェロは、「十二使徒だけを描くなら貧相になってしまう、なぜなら使徒たちは貧乏だったから」と言い、十二使徒から派手な絵になりそうな巫女と預言者に変更しました。
キリスト教からすると「巫女」は異教です。
では、なぜここに描くことができたのかというと、巫女の神託はイエス誕生の予告と都合よく解釈され、彼女らは旧約聖書の預言者と対になる存在と見なされるようになっていたからです。
ヨナ
エレミヤ
ペルシアの巫女
エゼキエル
エリュトレイアの巫女
ヨエル
ゼカリヤ
デルフォイの巫女
デルフォイの巫女は、システィーナ礼拝堂の天井画の中でも、特に若々しく魅力的な女性として描かれています。
イザヤ
クエマの巫女
ダニエル
リビアの巫女
ペンデンティヴ
青銅の蛇
ハマンの処刑
ダビデとゴリアテ
ユディトとホロフェルネス
キリストの祖先たち
ネームプレートに書かれた人名と、絵の人物は必ずしも一致しておらず、結局誰なのかわからないという謎のルネッタです。
アキム/エリウド
アミナダブ
アサ/ヨシャファト/ヨラム
アゾル/サドク
エレアザル/マタン
ヒゼキヤ/マナセ/アモス
ヤコブ/ヨセフ
エッサイ/ダビデ/ソロモン
ヨシア/エコンヤ/シャルティエル
ナフション
レハブラム/アビヤ
サルモン/ボアズ/オベド
ウジヤ/ヨタム/アハズ
ゼルバベル/ アビウド / エリアキム
スパンドレル
ここに描かれている人物については、誰なのかはっきりしていません。
衣服を作っている母と子
パンを手に持つ授乳中の母
聖母マリア?
エジプト逃避途上の休息風
イニューディ
中央の『創世記』の天井画9面中、5面の四隅を支えている、謎の裸体の男性像です。
彼らは天使なのでは?ともいわれています。
ノアの泥酔
大洪水
エヴァの創造
大地と水の分離
太陽、月、植物の創造