フェルメール「デルフトの眺望」を超解説!みんなが大絶賛の作品

こんにちは!

今回は、フェルメールの《デルフトの眺望》についてです。

早速見ていきましょう!

デルフトの眺望

ヨハネス・フェルメール《デルフトの眺望》1660-1661年

本作は、南側からコルク運河越しに見たフェルメールの故郷デルフトが描かれています。

デルフト生まれ、デルフト育ち

フェルメールの生涯は、よくわかっていません。

彼の人生についてはっきりわかっているのは、デルフトで生まれ、生涯この街で暮らしたということです。

そのため彼は「デルフトのスフィンクス」とも呼ばれているそう。どこで…。

実際の景色ではない

フェルメールの描いた都市景観画は実に写実的に見えます。

しかし、フェルメールによるこの街の描写は正しいものではありません。

故郷を理想的に表現するために配置を動かし、都合に合わせて街のあらゆる要素を変更し描いています。

ですが、あまりにも完成度が高いので、まるで350年前の街に出かけ、コルクにある家屋の最上階の窓からデルフトを見ているかの感覚に陥ります。

ロッテルダム門

 

これはロッテルダム門で、中世の古い城門です。

デルフトはこの頃、周囲を防御のための壁で囲っていたため、人々は各所に設けられた門を通って街に出入りしていました。

ロッテルダム門は、すでに取り壊されてしまっていますが、デルフト市街の東にある東門のみ現存しています。

 

ここから街に入る人は、最初に跳ね橋を渡ってから、前の2つの尖った塔を持つ建物に至ります。

その背後には左側の建物、正門へと続く狭い通路があります。

フェルメールは軽いタッチで壁を塗ることで、レンガの古い外観を表現しています。

スヒーダム門

 

これはスヒーダム(スキーダム)門です。

この門の位置を実景とは少し変えて描くことで、景観との調和を図っています。

この門の前にはかつて建物がありましたが、1600 年頃に取り壊されました。

 

門の前には、内陸部の水路で物資を運ぶために使用された2隻の帆船が描かれおり、フェルメールは、白い絵の具をたっぷりと付けたブラシで折り畳まれた帆布を塗っています。

午前7時の風景?

 

屋根付近に時計があるために、スキーダム門は縦に細長く見えます。

時計の針は、朝の7時10分頃を指しています。

実際にはありえない水面の反射

 

この時間であれば、水面に映る建物の影はもっと短いはずです。

 

フェルメールも最初は、水面の反射を本物のようにもっと短く描いていました。

しかし後に、影を午後のように引き伸ばして描き直しました。

こうすることによって、港に奥行きが生まれ、画面の下半分が視覚的に安定しました。

絵の具に砂を混ぜる

 

この建物に使われた絵の具には、砂が混ぜられていることがわかっています。

下塗りにも粒の粗い絵の具が使われており、厚く絵の具を塗り重ねた絵の表面には、凹凸が出ています。

それによって、光が乱反射し、雨に濡れた街の輝きを表現しています。

薄く塗られた空や水面との対比によって、さらに立体感が強調されています。

旅行客

 

オランダで快適な旅をするには、馬によって牽引されるはしけを利用するのが便利でした。

 

ここでは、数人の旅行者が波止場でロッテルダム、スキーダムまたはデルフスハーヴェン行きの定期船を待っている様子が描かれています。

左端の女性???

 

この女性、よく見ると何がどうなっているのだろう…と思いません?

女性が2人いるわけでも、おばけなわけでもなく、女性が子供を抱いています。

これはとても珍しいことで、フェルメール作品で子供が登場するのは本作と《小路》だけです。

人がいても静か

フェルメールの都市景観画において、人物は二次的な重要性を持っています。

この作品でも、貿易が盛なために往来の多いこの街に対して、描かれた人が少ないため静かな印象を与えています。

 

描かれた 2 人の女性も、ほとんど音を立てていないようです。

消えた男性

 

当初、女性の右側には帽子をかぶった男性が描かれていましたが、フェルメールは彼を塗りつぶしてしまいました。

初期の修復作業で1度その男が描き加えられたことがありましたが、1994年の調査でフェルメールが自分で塗りつぶしていたことが判明し、男は再び塗りつぶされました。

技法

フェルメールは、相当厚く絵の具を重ねることもあれば、非常に薄い層しか塗らないこともありました。

 

黒い船(漁業用の外洋船)をたっぷりの絵の具で塗り、近くの水面に反射した光に照らされている様子を点描で表現しました。

 

水の描写には油絵の具の薄い層を境目なく重なり合わせるという技法を使っています。

これによって、水が限りなく透明に近く見えるという効果が生まれています。

影と光

 

古い門や壁のある街の端は、全体的に影に包まれています。しかしフェルメールは、中央の橋の上に観る者の視線を集め、さらに朝日に照らされた街の中心に向かって誘います。

 

手前ではなく遠方に光を描くことで、フェルメールはこの街並みに奥行きを生み出しているのです。

デルフトで最も重要な「新教会」

 

デルフトで最も重要な建物は、祖国の父、オレンジ公ウィリアムを始めとする、代々のオランダ王室の墓がある「新教会(ニウエ カーク)」です。

高さ約109mある、この教会の尖塔を、雲間から差し込む明るい太陽の光で照らし出すように描くことで強調しています。

実際には、尖塔はもう少し右側に位置しています。

しかしフェルメールは、それを若干中央寄りに描いています。

フェルメールは、黄色い絵の具のクリーム色の層で日差しを浴びた尖塔の側面を描き出しています。

鐘の有無で制作年がわかる

 

塔の中には鐘がぶら下がっておらず、開いた鐘楼の窓からは曇った空が見えています。

1660年5月から1661年の秋にかけて、アムステルダムに住む鐘の製作者ヘモニーにより鐘の取り付けが行われました。

このことから、フェルメール は、それ以前に本作を制作していたことがわかります。

画面の6〜7割は空

 

オランダでは雨の降る日が年間180日を超えることもあり、本作のような雨上がりの曇天が多いそう。

描かれている季節は夏の初めです。

 

画面の6〜7割を空に費やしていることから、フェルメールが、雲や水蒸気に反射してきらめく光を描きたかったことがわかります。

青空には、フェルメールの大好きな絵の具ウルトラマリンブルーが使われています。

水面

 

青い空を映し出している水面にも、白い下塗りの上にウルトラマリンブルーを薄く塗り重ねています。

こうすることによって透明感を出しています。

 

建物の影の部分は、茶色がかった灰色と灰色がかった青い絵の具を使用しています。

さらにそれぞれの筆跡の間を、やわらかい筆でなでつけてかすみを与えています。

サイン

 

フェルメールは、乗客用の荷船(一番手前の船)の側面に「VM」というイニシャルでサインを残しています。

プルーストが大好きな絵


失われた時を求めて 全14冊 美装ケース入りセット (岩波文庫)

20世紀を代表するフランス文学、そして世界的傑作であるプルーストの長編小説『失われた時を求めて』で、「私は世界でもっとも美しい絵画を見た」と大絶賛したのが本作です。

プルーストはフェルメールが大好きで、特に本作を気に入っており、2回この絵を見に行っています。

昔から高評価(取り合い)

本作は、昔から高く評価されていました。

フェルメールの死から21年後の1696年の競売では、フェルメール作品のなかでも最高額の200ギルダー(約200万円)がつきました。

その120年後、この絵の購入を、アムステルダム国立美術館とマウリッツハイス美術館が競い合い、国王が仲裁して、所蔵先がマウリッツハイス美術館に決まったなんてエピソードも残っています。