こんにちは!
今回は、ガブリエル・フォン・マックス《法悦の乙女カタリーナ・エメリッヒ》を解説します。
早速見ていきましょう!
法悦の乙女カタリーナ・エメリッヒ
ガブリエル・フォン・マックス《法悦の乙女カタリーナ・エメリッヒ》1885年
なにやら頭が痛そうな彼女、一体どうしたのでしょうか?
彼女はだれ?
この絵に描かれているのはアンナ・カタリーナ・エメリッヒという実在したドイツの修道女です。
彼女は、イエス・キリストに関する幻視や神秘的な体験をたびたび経験し、上の絵もそれに関係したシーンが描かれています。
イエスへの想いが強すぎて頭や手から出血
病弱なエメリッヒが寝込んでいたある日、聖痕(スティグマ)を受けました。
聖痕とは、イエス・キリストが磔刑を受けた際に彼の肉体にできた傷と同じ場所に現れる痕のことです。
それまで彼女は磔刑像を膝に置いて祈っていたのでしょう。
突然、締めつけられるような頭痛に襲われ、こめかみに両手をあてる彼女の姿が描かれています。尋常でない激痛と法悦が入り混じって彼女の身体を貫いている様子が伝わってきます。
頭部にすでに冠のような傷ができていたため、白いぴったりとした被り物と白い鉢巻き状の包帯で隠していました。
聖痕を受け、包帯の右上の部分と左手の甲から血が滲んでいます。
1本のロウソク
この絵には、机の上に立っているロウソクが一本描かれています。炎は真っ直ぐに立ちのぼっており、これはエンメリヒの信仰に揺らぎがないことを象徴しています。
実際の彼女は…
エメリッヒが聖痕を得たのは40歳を過ぎてからで、当時の基準では老女に近い年齢でした。
しかし、この絵では若く美しい乙女として描かれています。これは画家が、彼女の純粋で信仰心に溢れる心の美しさを描きたかったためかもしれません。
こんなこと実際にあるの?
催眠や自己暗示によって聖痕のような現象が起こることはあるんだそう。実際に催眠術による実験では、暗示を繰り返し受けることで実際に傷ができる例が報告されています。
また彼女は頭痛持ちでした。偏頭痛を持つ人にもリアルな現実感を伴う幻覚が現れやすいことがわかっています。
エメリッヒの聖痕現象は、彼女が個人的な危機に直面している時期に起こっています。
イエスやマリアに思いを寄せることで救いを見出そうとしていました。彼女がイエスと一体化したいと願い、イエスと同じ苦痛を感じたいと切に祈ったことが、強烈な自己暗示となった可能性があります。
ということで、嘘とも本当とも言い切れない話なんだそう。
この話を信じてたらしい
この作品は、ガブリエル・フォン・マックスが、エメリッヒの死後半世紀以上経った1885年に描いたものです。
マックス自身は神智学協会の会員であり、神秘的で象徴主義的な作品を多く発表していました。彼はエメリッヒの奇蹟を信じていたのだとか。