こんにちは!
今回は、平凡でこれといって何もしていない王妃を、盛りに盛って盛りまくってルーベンスが描いた連作を紹介します!
早速見ていきましょう!
目次
マリー・ド・メディシスの生涯
《マリー・ド・メディシスの生涯》は、フランス王太后マリー・ド・メディシスが、パリのリュクサンブール宮殿の装飾用に、ルーベンスに注文した24点の連作絵画です。
マリーの生涯についての絵が21枚、肖像画が3枚で構成されています。
マリー・ド・メディシスの運命
《マリー・ド・メディシスの運命》1600-1700年
神がマリーの運命の糸を紡いでいます。
公女の誕生
《公女の誕生》1600-1625年
中央で光っている赤ちゃんがマリーです。
「マリー生まれました!!!」っていうのを全力で盛り上げている絵です。
公女の教育
《公女の教育》1600-1625年
中央の赤い服がマリーです。
「マリー将来のために勉強してます!!!」という、ごく普通の内容なのですが、普通に描いても華がないので、教師は神(左3人)という設定で、なんかすごそうな感じにまとめています。
3人の裸の女性は三美神で、マリーに美しさを与えています。
アンリ4世へのマリーの肖像画の贈呈
《アンリ4世へのマリーの肖像画の贈呈》1600-1625年
未来の夫でフランス王アンリ4世が、マリーの絵を見ています。
当時、結婚前に会うということは、通常無いので、相手のことは絵で知ります。
神やキューピッドで武装したマリー渾身の肖像画です。
もちろんアンリ4世は気に入ったのでしょう。
マリー・ド・メディシスとアンリ4世の代理結婚式
《マリー・ド・メディシスとアンリ4世の代理結婚式》1600-1625年
マリーとアンリ4世の代理結婚式の場面が描かれています。
アンリ4世の代理として、マリーの叔父が花婿役をしています。
なぜ「代理」結婚なのかというと、違う国の王族同士の結婚だと、片方が出席できないからです。
自分の国を空けて、他国に行くなんてことはできません。
そこで、ヨーロッパでは、嫁入りする方が代理を立てて結婚式をするという風習がありました。
マルセイユ上陸
《マルセイユ上陸》1600-1625年
フランスのマルセイユにマリーが来たよ!!!っていう、本当に別に大したことでは無い出来事を描いた絵です。
長いラッパを吹き鳴らし、空中を飛んでいるのは「名声」の擬人像です。
船から降りたマリーが、出迎える相手を全く気にしていないのは、彼らが人間ではないからです。
白百合を散らした青マントの男は「フランス」、城壁型冠をかぶった女は「マルセイユ」の擬人像です。
海神ネプチューン(ポセイドン)、トリトーン、海のニンフたちが描かれています。
マリーとアンリ4世のリヨンでの対面
《マリーとアンリ4世のリヨンでの対面》1600-1625年
マリーとアンリ4世の初対面の場面が描かれています。
何が起きているのかというと、2人は神のコスプレをしています。
マリーはヘラ(ギリシャ神話最高位の女神)、アンリ4世はゼウス(神の中で1番偉い。妻はヘラ)に扮しています。
現実では、アンリ4世には深く寵愛する愛人がいたため、その関係で、実際にマリーがアンリ4世に会えたのは、到着して1週間後でした。
アンリ4世、なんと生涯で50人もの愛人がいたそう…。
これをそのまま絵に描くとあまりにもマリーがみじめなので、好色な神ゼウスと、その妻ヘラで描いたルーベンスの機転が天才…。
フォンティーヌブローでの王子の誕生
《フォンティーヌブローでの王子の誕生》1600-1625年
マリーが産んだ最初の王子である、後のルイ13世の誕生が描かれています。
ルイ13世は、神にあやされています。
将来安定〜って感じでしょうか。
摂政委譲
《摂政委譲》1600-1625年
アンリ4世から、フランス摂政とドーファン(国王の相続人)養育を任されているマリーが描かれています。
手に持っているオーブ(球体)は「一国全てに対する支配、権力」の象徴です。
サン=ドニの戴冠
《サン=ドニの戴冠》1600-1625年
アンリ4世とマリーの戴冠式が描かれています。
アンリ4世の神格化とマリーの摂政宣言
《アンリ4世の神格化とマリーの摂政宣言》1600-1625年
なんとアンリ4世が暗殺されてしまいます。
そこで、左側では、アンリ4世を神々たちが神の住むところへ運ぼうとしている場面が描かれています。
右側では、マリーが摂政就任を宣言しています。
神々の評議会
《神々の評議会》1600-1625年
マリーがフランス政権を引き継いだ記念の1枚です。
みんな神です。
マリーが神の力によって、フランスを良い感じに統治していた感を演出しています。
ユーリヒでの勝利
《ユーリヒでの勝利》1600-1625年
マリー唯一の軍事行動を描いた作品です。
フランス軍の勝利は、マリーのお陰!マリーは勇敢!みんなの英雄!って感じの絵です。
スペイン国境での王女の交換
《スペイン国境での王女の交換》1600-1625年
マリーの子供たちの結婚が描かれています。
左は、スペイン王フェリペ4世と結婚したマリーの娘エリザベート(フェリペ4世といえば《ラス・メニーナス》が有名ですね)、
右は、マリーの息子ルイ13世と結婚したスペイン王女アナが描かれています。
横にいる男性は、フェリペ4世でもルイ13世でもありません。
それぞれスペインとフランスの擬人像です。(ややこしい)
摂政マリーの至福
《摂政マリーの至福》1600-1625年
簡単にいうと、「正義の女神ごっこしているマリー」です。
まわりはみんな神。
ルイ13世の国王就任
《ルイ13世の国王就任》1600-1625年
これは船で旅した思い出の絵ではもちろんありません。
左にいるのがルイ13世、隣がマリーです。
これからはマリーではなくて、ルイ13世に政権が移ったことを表しています。
船をフランス国土に見立て、これからはルイ13世が舵を取り、導いていくよ!という絵です。
ブロワ城からの脱出
《ブロワ城からの脱出》1600-1625年
なんとマリー、実の息子のルイ13世に疎まれて、ブロワ城に幽閉されていました。
そこをリアルに描くと、非常にみじめなので、ルーベンスは、かっこよく脱出した場面を描きます。
アングレームの条約
《アングレームの条約》1600-1625年
「こっちは仲直りするつもりありますよ(年長者の余裕の笑み)」
という顔のマリーが、神々の伝令役メルクリウスが差し出すオリーヴの枝を受け取っている場面が描かれています。
メルクリウスはいうまでもなく、ルイ13世側を表しています。
アンジェの平和
《アンジェの平和》1600-1625年
なんやかんや仲直りできなくて、困っているマリーが描かれています。
マリーはどこかというと、左の、胸に手を当てて、周りに守られている女性がそうです。
完全なる和解
《完全なる和解》1600-1625年
マリーとルイ13世のいざこざを描いても、別に面白く無いのと、双方の機嫌を損ねると面倒なので、ルーベンスは当たり障りのない感じで、美徳が悪徳をこらしめて、平和が訪れる…という感じの絵を描きます。
真理の勝利
《真理の勝利》1600-1625年
場面は天国、一番上にいる、マリーとルイ13世が和解しています。
現実でも2人は一応和解しますが、その後またいざこざがあってマリーは追放されるので、絵の通り、2人が本当に和解できたのは天国だったのかもしれません。
この絵で、マリーの生涯に関する絵は終わりです。
肖像画
《トスカーナ大公妃ジョヴァンナ》1600-1700年
マリーの母親です。
《マリー・ド・メディシス》1600-1700年
《トスカーナ大公フランチェスコ1世》1600-1700年
マリーの父親です。