こんにちは!
今回はブロンズィーノの謎すぎる絵について解説します!
早速見ていきましょう!
愛のアレゴリー

アーニョロ・ブロンズィーノ《愛の勝利の寓意(愛のアレゴリー)》1540-1545年
何この絵〜?って思いません?
不思議な絵ですよね。
この絵はメディチ家のコジモ1世が、教養豊かなフランス王のフランソワ1世へのプレゼント用にと依頼した作品です。
当時、意味もなく女性の裸を描くということは、タブーでした。(宗教や社会的に許されていなかった)
ただ、需要はあるので、神話などでカモフラージュして描いていました。
神なら裸で描いてもOK。なぜなら人間じゃないから。という謎ルールのもと、多数の絵が描かれています。
では、この作品の裸の女性は誰なんだろ…って思いますよね。
auのCMみたいなもの
auのCMに登場する日本昔ばなしでおなじみのキャラクター、桃太郎・浦島太郎・金太郎。
日本人であれば、ぱっと見で「桃太郎だ〜」とかってわかりますよね?
それって顔を覚えている訳ではなくて、ストーリーや服装、持ち物など、特徴を覚えているからですよね。
それです。
西洋絵画にもよく出てくる人気キャラクターや物語があって、この持ち物を持っていると誰、これはクライマックスの場面だ!など知っていると、初見でも何の絵なのかわかるようになってきます。
ざっと解説

ヴィーナス&キューピッド

愛と美の女神ヴィーナスの持ち物、金色のリンゴ、バラ、鳩(愛欲を強調)、真珠、キューピッドが周りに描かれていることから、彼女は人間ではなくて、ヴィーナスだとわかります。
キューピッドは緑、白、青の羽根と、斜めがけしている矢筒と矢から判断できます。

キューピッドの足元にある枕は、「淫欲」を象徴しています。
2人はキスをしていて、近親相姦的なあやしげな雰囲気満載ですが、実は親子です。
親子だからこそ、さらに危ない感じが増すので、依頼人と受取人は大喜びだったことでしょう。
このアブノーマル感を、2人が親子だと知らなくても何となく感じ取れるところにこの絵の凄さはあります。

キスをしながら、ヴィーナスはキューピッドの矢(射られると恋に落ちる)を奪い、彼の無力化を図り、キューピッドはヴィーナスの高価な真珠の王冠を取ろうとしています。
お互いの大切なものを奪い合うという二面性をもつ油断も隙もない2人。

ヴィーナスの足元にある仮面は、2枚あることから二面性を表し、2人が欲望を利用して欺瞞を隠蔽していることを示しています。
快楽or愚行の擬人像

この後2人に向けて持っているバラの花びらをパァァァ〜〜っと投げようとしています。
フラワーシャワーです。
投げたらキレイだけど一瞬で終わることから、「はかない快楽」を表しています。
この「快楽」が本作に軽みを与え、背後の「欺瞞」のまがまがしさを強調しています。

道化が身につける鈴を足首につけています。

男の子の右足は、バラのトゲを踏んで、トゲが貫通しています…!
普通なら痛くて大泣きなところ、笑顔です。気付いていないんです。
愛には痛みがつきものということなんでしょうか。
そんなところから「快楽」や「愚行」を表していると解釈されています。
欺瞞の擬人像

かわいい女の子!と思いきやキメラ…???

ライオンみたいな足を持ったヘビで、毒のある尻尾を握っています。(さそりを持っているとの説も)

もう片方の手で蜂の巣を差し出しています。
甘い誘惑には気を付けろってことですね。
左右の手が入れ替わっているとよく言われていますが、個人的には入れ替わってないように思うのですが…。
マニエリスムの絵画の特徴でもある、変に体がねじれて描かれているところから、そう見えるだけなのでは…?
彼女のブローチで留めているマントは、ピンクにもブルーにも見えるところも欺瞞的です。
時の擬人像

肩の上に砂時計をのせている老人は、「時」の擬人像です。
老人なのは時の経過を、背中の翼は時が早く過ぎ去ることを表しています。
問題は彼が青い布で、この一連の欺瞞を隠そうとしているのか、明らかにしようとしているのか、何をしようとしているのかです。
個人的には指の感じからして、布をはぎ取ろうとしているんじゃないかな〜と。
横の忘却の擬人像を睨み付けているようにも見えるし。
真実or忘却の擬人像

「時」と向いあう女性は、娘の「真実」の擬人像です。
2人はペアで現われ、時が経てば真実が明らかになることを示しています。
でもこの「真実」、のっぺりとした顔ですよね。
これは真実が仮面を付けているようにも見えます。
だとしたら、それはもう虚偽です。
布で隠そうとしていて、はぎ取りたい時の擬人像との攻防戦です。
あるいは、「大切なことは忘れちゃえ〜欲望に忠実に!布で隠しちゃうよ〜!」という忘却の擬人像とも考えられます。
嫉妬の擬人像

1人だけ異質な感じの人物は、嫉妬の擬人像で、梅毒(性病)の症状を表しています。
当時、梅毒にかかる人も亡くなる人も多かったそう。
ただ、フランソワ1世が梅毒にかかっていたことから、贈り物にそんな絵を描かせるか?ということもあり、「梅毒」を表しているのかは諸説あるそう。
何の絵?
全体的な意味としては「愛欲」を表していると考えられています。
「愚かさは身を滅ぼすよ」という忠告の絵と読むこともできます。
いまだにいろんな解釈がされている作品でもあるので、奥が深い絵でもあります。
欺瞞や嫉妬から自分を守るためには、自分の気持ちをコントロールし、欲望がもたらす忘却に負けないように!という教訓とも、
欲望に負けて、欺瞞に満ちた不貞の愛は、痛みを伴う結果になるよ!という戒めの絵なのかもしれません。