こんにちは!
今回は、ターナーの《雨、蒸気、速度:グレート・ウェスタン鉄道》を解説します。
早速見ていきましょう!
雨、蒸気、速度:グレート・ウェスタン鉄道
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《雨、蒸気、速度:グレート・ウェスタン鉄道》1844年
ターナーが69歳のときに描いた晩年の作品です。
この絵が描かれた当時、鉄道は最先端の技術でした。
ターナーの蒸気機関車への興奮が伝わってきますね。
初めて鉄道を主題にした作品
18世紀にワットが発明した蒸気機関車は、産業革命を推進し、19世紀のイギリスでは、鉄道網が本格的に発達しました。
当時の蒸気機関車は、煙突から小さく煙を吐くタイプでした。
テムズ川の高架橋を渡る蒸気機関車を描いたこの作品は、初めて鉄道を主題にした作品ともいわれています。
本作では、光と大気の渦巻く激しい嵐の中を駆け抜ける蒸気機関車が描かれています。
橋
現在も使用されているメイデンヘッドの高架橋です。
画面中央に向かって遠近法が極端に用いられ、さらにこの線路が遠近法を強調し、突進してくる蒸気機関車のスピードと臨場感が伝わってくる作品に仕上がっています。
この表現の仕方は、ロランの《シバの女王の乗船》からの影響が見られます。
左にあるのは、アーチ型のテイラー橋です。
高架橋と新旧の対比になっています。
野うさぎ
絵具の褪色により、現在ではほとんど見えなくなってしまっているのですが、なんと蒸気機関車の前に、線路を横切ろうとする野うさぎが描かれています。
作品がほとんど完成してから、最後に描き加えられたそう。
野うさぎを描くことによって、蒸気機関車の疾走感を強調したり、画面に緊張感を与えています。
人がいる…!
川にはボートに乗った人が描かれています。
岸にも人がいます。
さらに、右側には畑仕事をする農民が描かれています。
大自然と、自然と共に生きる人間の営み、近代文明の蒸気機関車が対比されています。