こんにちは!
今回は、2004年のオークションで話題になったフェルメールの作品について紹介します。
早速見ていきましょう!
ヴァージナルの前に座る若い女
ヨハネス・フェルメール《ヴァージナルの前に座る若い女》1670-1672年
オークション
2004年7月7日、新たに発見されたフェルメールの作品がオークションに出品され、話題になりました。
それが上の絵です。
フェルメールは寡作だったため、約30点しか作品が残っていないこともあり、奇跡のような出来事でした。
どうしてこの絵がオークションにかけられることになったのかというと…
スリーパー
この作品を見つけたのは、世界最大のオークション会社サザビーズのエキスパート、グレゴリー・ルービンスタインです。
エキスパートというのは、作品の真贋を見極める専門家のことです。
「スリーパー」と呼ばれる、本当は巨匠の絵だけど、汚れや加筆で無名画家の価値のない絵だと思われていた作品を発掘し、オークションにかけるのが彼らの仕事です。
フェルメールを持っているという連絡
1993年、ルービンスタインは、フェルメールの絵を持っているという男爵と出会います。
フェルメールは作品数が少ないことで有名、さらにその多くが美術館に収蔵されており、1921年のオークションを最後に市場に流通していなかったため、本物を持っているとは思えませんでした。
偽物だろうな…と思いつつ一応絵を見せてもらうことに。
ちなみに絵を所有していた男爵は自身は、贋作だと思いつつ画商から買ったそう。
その絵を見たルービンスタインは、直感で本物だと感じ、「本物」である証拠集めが始まりました。
ロンドン・ナショナル・ギャラリーでの調査
ヨハネス・フェルメール《ヴァージナルの前に立つ女》1670-1672年頃
ヨハネス・フェルメール《ヴァージナルの前に座る女》1670-1672年頃
まず、フェルメールの絵を所蔵しているロンドン・ナショナル・ギャラリーに調査を依頼し、上の2枚のフェルメールの作品とこの絵を比較検証してもらいました。
フェルメールは遠近感を出すために、中心となる人物の手前に物を置き、奥の壁には絵画を飾るという構図をよく用いていました。
ナショナル・ギャラリーの2枚の絵は、どちらもその手法で描いていますが、今回の絵は手前にも壁にも何も描かれていませんでした。
さらに、布を描くこと得意としていたフェルメールにしてはショールに質感がなく、陰影も不自然に見えました。
結果、専門家は、構図やショールの描き方が不自然だとして「真作ではない」と結論づけます。
ロンドン大学での調査
それでもめげないルービンスタインは、1995年に、ロンドン大学に顔料分析の調査を依頼します。
顔料を分析し、この絵が描かれた時代を特定しようとしました。
その結果、ショールの部分に使用されていた黄色の顔料は、17世紀、フェルメールの時代にしか使われていないものだということがわかりました。
さらに、壁の部分を分析すると、その下地にフェルメールが好んで使っていたウルトラマリンという高価な顔料が使われていることがわかりました。
フェルメールは白色などの透明感を出すために、下地として青色のウルトラマリンを使用することが多々ありました。
この調査によって、フェルメールと同じ時代に、同じ手法で描かれた絵だということが判明しました。
X線調査
X-radiograph of Young Woman Seated at a Virginal, JVe-100
出典:The Leiden Collection『Young Woman Seated at a Virginal』
次にX線調査で、絵の具の重ね方やキャンバスの細かい状況を調べました。
すると、ショールの部分が描き直されていることが判明しました。
X-radiograph of Young Woman Seated at a Virginal, JVe-100
出典:The Leiden Collection『Young Woman Seated at a Virginal』
当初、ショールの丈はこの絵より短く、スカートのひだはウエストの部分まで見えるくらいでした。
並べてみるとよくわかります↑
それを誰かが腰まで隠すようにショールを描き足していたことがわかりました。
そのため、鑑賞者に不自然な印象を与えていました。
ショールの不自然さが解明されても、だからといって「真作」とも言い切れないため、次に、フェルメール全作品のX線写真を集め、徹底的に比較しました。
ヨハネス・フェルメール《レースを編む女》1669年
すると、同じサイズの《レースを編む女》とあることが一致し、「真作」と特定することができました。
なにが一致したのかというと、X線写真を縦に並べ、キャンバスの縦の線に注目すると、2枚のキャンバスの糸目がそろっていることがわかり、同じ生地から作られたキャンバスだということが判明しました。
当時、画家は自分でキャンバスを作っていたため、キャンバスの一致は「真作」の証拠となりました。
とは言っても、実はいまだに贋作疑惑のある絵だったりもします。(フェルメールにしては全体的に下手という理由)
その後、修復と洗浄が行われました。
修復前に比べると、壁には明るい光がさし、暗かったスカートの部分にも光が当たっています。
高額で落札
そして、2004年にオークションにかけられ、約33億円で落札されました。
落札者は電話で参加していた匿名の人物でした。(後に美術品収集家のスティーブ・ウィンと判明)
その後、美術収集家のトーマス・カプラン(ライデンコレクション)が購入しました。