マグリット「光の帝国」油彩画全17枚を一挙紹介!超解説!

こんにちは!

今回は、マグリットの《光の帝国》シリーズを紹介します。

早速見ていきましょう!

「光の帝国」シリーズ

偽りの現実

ルネ・マグリット《光の帝国》1954年

《光の帝国》は、戦後期のマグリットを代表する傑作です。

この絵は、夜と昼、光と闇とを同時に表現しており、そのあり得えない世界に鑑賞者は惹き込まれていきます。

マグリットの住んでいたブリュッセルのエッセゲム通りに似た、静かで手入れの行き届いたブルジョア地区(いくつかのバージョンは田舎)の夜の光景が描かれています。

マグリットは、1956年にこの作品について次のように語っています。

「 一枚のタブローの中に描き出されているのは、目に見えるものです。つまり、ひとつないし複数の事物で、それが、思索の対象となっているわけです。…それゆえ、《光の帝国》というタブローに描き出されているのも、私が考察の対象とした事物なのですが、それは、正確に言うならば、夜景と昼日中に見るような空です。…この夜と昼とをともに想起することは、私たちを驚かせ、魅了する力を帯びているように、私には思えます。私はこの力を詩(ポエジー)と呼びます。…この想起が、このような何らかの力、つまり詩的な力を持つと思うのは、何と言っても、私がつねに、夜と昼に対して最大の関心を寄せてきたからです。とはいえ、どちらかが好きだと感じたことは一度もありません。…夜と昼に対するこの大きな個人的関心は、一種の崇敬と驚異の感情です」

タイトルを考えたのは詩人

ルネ・マグリット《ポール・ヌジェの肖像》1927年

マクリットはいつも、作品ができあがると、親しい仲間の詩人たちに見せて、タイトルを考えさせていました。

《光の帝国》も例外ではなく、命名者はポール・ヌジェです。

このタイトルの翻訳について、別の友人であるマルセル・マリエンは、フランス語の原題「L’empire des lumières」の「empire」は、明らかに「領土」ではなく「力」や「支配」を意味しているのだから、英訳する際に「empire(帝国)」の語を使うべきではないと述べています。

実際、シルヴェスターのカタログ・レゾネでは、「dominion(支配)」の英訳が当てられており、邦題にしたら《光の支配》となります。

全部で27枚ある

デイヴィッド・シルヴェスターが編纂したマグリットのカタログ・ レゾネには、《光の帝国》のタイトルで、17点の油彩と10点のグワッシュが記録されています。

これは、マグリット作品の連作としては、最も数多く描かれたもののひとつです。

昼間の青空と街灯が灯る夜の街路の組み合わせは共通していますが、様々なバリエーションがあり、1949年の第1作から晩年の1960年代の約15年間、切れ目なく描き続けています。

人気の高いモチーフで、 制作依頼が多かったのでしょう。

街灯路が何かに見えてくる…?

 

街灯が、マグリットお得意の山高帽の男のシルエットに似ています。

ルネ・マグリット《人の子》1964年

1枚の絵を4人に売る約束をする

ルネ・マグリット《光の帝国》1953-1954年

1953年末から翌1954年の4月にかけて、マグリットは8作目の 《光の帝国》を制作しました。

これは、縦約2メートルの大作で、5月にブリュッセルのパレ・デ・ボザールで開催された回顧展に新作として出品されました。

さらに終了後すぐ、シュルレアリスム30周年を記念した小個展がベルギー館で開かれるため、ヴェネツィア・ビエンナーレ会場に送られました。

《光の帝国》は、両会場でよほど人目を引いたのでしょう。

マグリットは、3人の異なった相手(ベルギー王立美術館、ベルギーの個人、取扱画商のアレクサンダー・イオラス)に、売却を約束してしまいました。

しかしながら、ビエンナーレ終了後に出品作が売却されたのは、全く別の第4の人物、ペギー・グッゲンハイムでした。

ではマグリットはどうしたのかというと、年末までの間に、一回り小さい 《光の帝国》を3点描いてそれぞれに渡しました。

その他の昼と夜の作品

ルネ・マグリット《恋人たちの遊歩道》1929-1930年

マグリットが「光の帝国」シリーズを描き始めるのは1948年からです。

しかし、それ以前にも「昼と夜」が同時に存在している絵を何枚か描いています。

ルネ・マグリット《毒(幸運)》1939年

ルネ・マグリット《帰還》1940年

ルネ・マグリット《無題》1944年

ルネ・マグリット《エコー》1944年

ルネ・マグリット《家》1947年

ルネ・マグリット《魅せられた領域Ⅰ》1953年

こちらはカジノの壁に描いた絵の一部です。

全て見たい方は↓

カジノの壁画マグリット「魅せられた領域」を超解説!360°部屋を再現!

2022.11.14

ルネ・マグリット《もう一つの言葉》1955年

ルネ・マグリット《キス》1957年頃

ルネ・マグリット《神の居間》1958年

ルネ・マグリット《謎のバリケード(神秘の障害)》1961年

ルネ・マグリット《世界の終わり》1963年

こちらは「昼と夜」が同時に描かれているわけではありませんが、「光の帝国」シリーズの最後から2つ目の作品と似ています。

ルネ・マグリット 《大家族》 1963年

ルネ・マグリット《空の鳥》1966年

エクソシスト


エクソシストの映画のポスター22″ x 34″ [並行輸入品]

ホラー映画「エクソシスト」のポスターは、マグリットの《光の帝国》のオマージュです。

油彩画全17枚+1

油彩画は全部で17枚だといわれていますが、探したら18枚見つかりました。

最後の1枚は未完のため1枚としてカウントしていないのかもしれません。

年代の横に所蔵先の記載が無いものは全て個人蔵です。ほぼ個人蔵だな…。

ルネ・マグリット《光の帝国》1949年

「光の帝国」シリーズで最初に完成させた作品ですが、最初に描いた絵ではありません。

実は最後から3番目の絵が最初に描き始めた絵です。

ルネ・マグリット《光の帝国Ⅱ》1950年 ニューヨーク近代美術館

ルネ・マグリット《光の帝国》1951年

ルネ・マグリット《光の帝国》1952年

ルネ・マグリット《光の帝国》1953年

ルネ・マグリット《光の帝国》1953年

ルネ・マグリット《光の帝国》1953年

ルネ・マグリット《光の帝国》1953-1954年 グッゲンハイム美術館

ルネ・マグリット《光の帝国》1954年

ルネ・マグリット《光の帝国》1954年 ベルギー王立美術館

ベルギー王立美術館の横のマグリット美術館にあります。

ルネ・マグリット《光の帝国》1954年 メニル・コレクション

ルネ・マグリット《光の帝国》1956年

ルネ・マグリット《光の帝国》1957年

ルネ・マグリット《光の帝国》1958年

ルネ・マグリット《光の帝国》1961年

ルネ・マグリット《光の帝国》1948-1962年

ルネ・マグリット《光の帝国》1964-1965年

ルネ・マグリット《騎手のいる風景(光の帝国)》1967年

ガッシュ

ガッシュ(グワッシュ)とは、不透明な水彩絵具のことです。

こちらは全部で10点ということでしたが、2点しか見つけることができませんでした。

ルネ・マグリット《光の帝国》1947年

ルネ・マグリット《光の帝国》1955年