こんにちは!
『鑑定士と顔のない依頼人』という映画を知っていますか?
まだ見たことないよ〜って言う人は、何も見ずに、このブログも見ずに、まずは映画を見てみてください!(笑)
ネタバレを先に読んでしまうにはあまりにももったいない映画です。
見たことある〜!って方のみ、続きを読んでください…
目次
『鑑定士と顔のない依頼人』
天才美術鑑定士の主人公ヴァージル・オールドマンの元に、美術品鑑定の依頼の電話がきます。
依頼人の若い女性クレアは、なぜか嘘の口実を重ね、ヴァージルの前に姿を表そうとしません。
不可解な行動ばかりの謎の依頼人に、断ろうかと思いながらも、結局気になってしまい、奇妙な鑑定依頼を引き受けることに…
(個人的にここ数年で一番衝撃的でびっくりして、口あんぐり…な映画でした…)
劇中に登場する絵画
謎だらけの映画ですが、絵画がその謎を解く鍵になっていたります。
ウンベルト・ヴェルーダ 《Sii onesta》
ウンベルト・ヴェルーダ 《Sii onesta》1890年
映画の字幕だと「誠実」という題名でしたが、誠実というよりかは「正直になろう」の方がニュアンス的には近いです。
上の絵を見て何かに気がつきましたか?
映画ではこの絵の右下に歯車があったことを覚えていますか?
実は本当の絵にはないんです!
この映画において歯車は重要なモチーフですよね。
それをあえて「正直になろう」というタイトルの絵に描き込む辺り、
映画を見終わった人なら、くぅぅぅ〜ってなるポイントですね。
横になっているのはヴァージルで、女性はクレアにしか見えません。
全部嘘だったけど、ヴァージルを思う気持ちだけは嘘ではなかったし、申し訳ない気持ちでいっぱいってところでしょうか…
ウィリアム・アドルフ・ブグロー《ヴィーナスの誕生》
ウィリアム・アドルフ・ブグロー《ヴィーナスの誕生》1879年
ウンベルト・ヴェルーダの絵の前に出てきましたね。
これまた愛の女神ヴィーナスとクレアが重なります…
お風呂上がりのクレアにヴァージルがタオルをかけて受け止めてあげるシーンなんかは、
サンドロ・ボッティチェッリ《ヴィーナスの誕生》1483年
このとっても有名な絵の右側の女性(季節の神ホーラー)みたいな感じだったなぁ〜って思ったり。
さらにさらに…このお風呂に浸かっているシーンも、
ジョン・エヴァレット・ミレー《オフィーリア》1852年
ミレーの《オフィーリア》っぽさがあったり…
ボリス・グリゴーリエフの弟子 ヤンスキー《渇き》
ボリス・グリゴーリエフは実在するロシアの画家ですが、弟子のヤンスキーは多分創作かな〜と思います。
なぜなら、映画の中で登場したセーラー服を着た少女が描かれている《渇き》という絵は、実在する絵ではないからです。
ボリス・グリゴーリエフ《Portrait of Anna Grilikhes》1917年
確かに映画の中の絵は、ボリス・グリゴーリエフの絵と似ている感じでした。
にしてもセーラ服の少女の絵のタイトルが《渇き》っていうのも意味深ですね…
ヴァージルの女性に対する渇望が現れているよう…
絵の中の女性の顔をなでるシーンなんかちょっと引きました。(笑)
ペトルス・クリストゥス《若い女の肖像》
トルス・クリストゥス《若い女の肖像》1470年頃
映画ではヴェリアンテという女性贋作家の作品と偽って、自分のものにした絵の元ネタです。
映画の中の絵も多分実在しない絵かなと思います。
ちなみにヴェリアンテという贋作家も調べても出てこないので架空の人物かなと。
ヴァージルの秘密の部屋に登場する絵
作品を見た方ならわかると思いますが、大量の絵が飾られていましたよね。
しかも全て女性!
その中から抜粋してご紹介します!
もう一度鑑賞することがあれば(笑)、是非映画の中で探してみてください!
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《ジャンヌ・サマリーの肖像》
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《ジャンヌ・サマリーの肖像》1877年
ジャンヌ・サマリーは当時の人気女優です。
ルノワールお気に入りのモデルでした。
ピーテル・パウル・ルーベンス《イザベラ・ブラント》
ピーテル・パウル・ルーベンス《イザベラ・ブラント》1620-1630年
イザベラはルーベンスの最初の妻です。
というのも、イザベラが先に亡くなってしまったため、その後再婚しています。
イザベラはルーベンスの絵によく登場します。
ロレンツォ・ディ・クレディ《カテリーナ・スフォルツァの肖像》
ロレンツォ・ディ・クレディ《カテリーナ・スフォルツァの肖像》1481-1483年
クレディはレオナルド・ダ・ヴィンチが影響を受けた画家です。
この絵とモナリザの顔が似ていると話題の絵です。
カテリーナ・スフォルツァは、スゴ腕の女性領主の名前です。
ラファエロ・サンティ《ラ・フォルナリーナ》
ラファエロ・サンティ《ラ・フォルナリーナ》1518年 – 1519年
ラファエロの愛人がモデルです。
左腕の腕輪には「ウルビーノのラファエロ」と書いてあります。
彼女は自分のものだよっていう主張でしょうか。甘い。
ポール・セザンヌ《温室のセザンヌ夫人》
ポール・セザンヌ《温室のセザンヌ夫人》1891-1892年
セザンヌの奥さんがモデルです。
セザンヌはモデルがほんの少しでも動くだけでめちゃくちゃ怒ったそうなので、セザンヌのモデルをよくつとめている奥さんの忍耐力は鬼です。