フェルメール「紳士とワインを飲む女(ぶどう酒のグラス)」を超解説!2人は恋人?

こんにちは!

今回は、フェルメールの《紳士とワインを飲む女(ぶどう酒のグラス)》についてです。

早速見ていきましょう!

紳士とワインを飲む女

ヨハネス・フェルメール《紳士とワインを飲む女(ぶどう酒のグラス)》1658-1660年頃

明るく広々とした室内で、座ってワイングラスを口に当てている女性と、帽子をかぶりマントをまとって立っている男性が描かれています。

本作はフェルメールが27歳くらいのときに描いた作品です。

ワインを飲み干す女性

 

椅子に座った若い女性がグラスを持ち上げ、ワインの最後の一滴を飲み干そうとしているようです。

 

当時の流儀にしたがってエレガントにグラスのフット(底の部分)を持つ姿は、この女性が上流階級の一員であることを示しています。

 

フェルメールは《真珠の首飾りの女》に見られるような日常的な服装の女性を描くことが多かったにもかかわらず、本作の女性は金襴の入った豪華な赤いドレスを着ています。

 

補正胴着とスカートは、特別な機会にのみ着用されていたものです。

ステンドグラスの意味

 

ステンドグラスの窓には女性の姿があしらわれており、これは「Temperantia(節制)」を擬人化したモチーフであると考えられています。

この絵は節制を描くことによって、ワインの飲酒を戒めると同時に、感情に流されることの危険性を暗示しています。

フェルメールは、男性が女性に言い寄ろうとする様子をよりはっきりと描いた後の《ワイングラスを持つ娘》でも、同様の寓意像を描いています。

楽譜と楽器の意味

 

「調和」を意味する楽譜と、「愛」を暗示する弦楽器のリュートが、無造作ながら目を引くように配置されています。

こうしたモチーフは、2人の恋愛関係を暗示しているだけでなく、この2人が裕福で、教養を身につけていることも示しています。

ワインを注ごうとする男性

 

紳士の方は何も飲んでいませんが、女性の空のグラスにさらにワインを注ごうとしています。

 

自信に満ちた態度でテーブルに寄り添いながら女性をじっと見つめる男性の姿は、この直後に 2 人の間で起こるロマンスにおいて、男性が支配権を握るであろうことを示しています。

当時のオランダ絵画では、経験豊富な年上男性が純粋で若い女性を誘惑するというテーマが人気を集めていました。

フェルメールは、ワインを使って誘惑する男性を描くことで、このテーマに従来のものとはわずかに異なる解釈を加えています。

他の絵にも登場する水差しと椅子

 

フェルメールの《眠る女》《ワイングラスを持つ娘》《音楽の稽古》にも同じ白い陶器の水差しが登場しています。

 

ライオンの頭部が彫刻されたスペイン椅子も、《眠る女》《士官と笑う娘》などフェルメールの作品にたびたび登場します。

 

フェルメールは椅子に反射する光を表現するために厚く絵の具を塗って、対象物の表面に光が反射する様子を生き生きと描写しています。

画中画の森の絵

 

上の画像は、画中画を明るく加工したものです。

フェルメールはこのように画中画をよく描いており、作者が判明しているものも多くありますが、本作のものは特定されていません。

アラート・ファン・エフェルディンゲン《水車小屋のある森の風景》1650年頃

この森の風景画は、アラート・ファン・エフェルディンゲンの作風に似ているものの、一致する作品はこれまでに見つかっていません。

 

光沢のある額縁は絵画構成のアクセントとなっており、また、風景は文学や音楽で愛の比喩として使用されることの多いモチーフです。

市松模様の床

 

寒い季節にも快適な木の床とともに、このようなタイル張りの床はオランダの家庭では一般的でした。

フェルメールは、小さなヒビや傷の残るセラミック製のタイルを描いています。

タイルのパターンは、絵画の構成における奥行きの表現に大きく貢献しています。

しかし、遠近法を意識するあまり、右手前が長方形にゆがんでいます。

デ・ホーホなどの影響

ヘラルト・テル・ボルフ《ワインを飲む女》1656-1657年

当時のフェルメールはデ・ホーホの作風の改良にとどまらず、ヤン・ステーン、ヘラルト・テル・ボルフ、フランス・ファン・ミーリスといった画家たちの優れた技法も作品に取り入れていました。

ピーテル・デ・ホーホ《オランダの中庭》1658-1660年

テーブルの周りで人々が酒を酌み交わし、一人の女性がグラスからワインを飲んでいるという構成は、デ・ホーホの上の作品を連想させます。

フェルメールの絵でも人物は前景ではなく中景に配する構成となっています。

中庭から屋内に変わり、より優雅な筆致で描かれており、様々なモチーフの表現からデ・ホーホの作品に比べるとはるかにお上品な作品、つまり上流階級の暮らしぶりを思わせる作品に仕上がっています。

人物が身につけている衣服、テーブルクロスの織柄、壁にかけられた絵画の金箔で飾られた額縁、紋章があしらわれたステンドグラスなど、あらゆるものが、この作品に描かれているのが裕福な人々であることを表現しています。