こんにちは!
今回は、ボヌールの《馬市》についてです。
早速見ていきましょう!
馬市
ローザ・ボヌール《馬市》1852-1855年 メトロポリタン美術館
《馬市》は、ボヌールの最も有名な絵画です。
幅5メートルの大画面を、さまざまな毛色の馬たちがダイナミックに駆け抜けていきます。
舞台はパリの馬市
左背景にサルペトリエール病院付属礼拝堂の丸屋根が見えます。
並木道のオピタル大通りで開催されていたパリ定期馬市が絵の舞台です。
19世紀半ば、まだ自動車普及前のため、馬の競り市場は活気にあふれています。
1年半の間、ボヌールは週に2回開催される馬市に男装して参加し、スケッチを描きました。
描かれているのはサラブレッドではなく、ノルマンディ産ペルシュロン種です。
大きく遅しい馬体と太く頑丈な脚を持ち、荷馬や軍馬として使われました。
右端に集まった仲買人や鑑定人が、馬を吟味しています。
尻尾に注目
数頭の白馬の尻尾が紐でくるくると巻かれていることから、牝だとわかります。
尾骨(尻尾の半ばまで骨がある)先端部から毛を折り返して結び、さらにまた折り返して中を通して結ばれています。
どうしてこんなことをしているのかというと、妊娠の有無を調べる際、肛門から腕を入れなければならず、長い尻尾を振り回されないよう一時的に縛っていました。
馬の躍動感
体型や毛並み、眼の表情や一瞬の動き、全てが卓越した観察力によって捉えられ、それぞれ個性豊かに描き分けられています。
いななき、蹄の音や鼻息、汗、騒音、においなど…臨場感や躍動美が表現されています。
この絵は、発表後たちまち国際的評価を得て、画家に確固たる名声をもたらしました。
紛れ込む自画像
画面の真ん中、混沌の中で静かな佇まいで馬に乗り、こちらを見つめる青いスモック姿の人物は、ボヌールの自画像だといわれています。
黒い帽子のつばで目元は影になっていますが、口元は微笑みを浮かべているように見えます。
ボヌールは女性でしたが、この絵のように男装して馬市に参加していました。
彼女は乗馬の際、両足を片側に寄せるような女性座りではなく、男性と同じように跨りました。
ただし《馬市》では、はしたないと酷評されるのを避け、上半身しか見えないように巧みな配置で描いています。
他のバージョン
ローザ・ボヌール《馬市》1855年 ロンドン・ナショナル・ギャラリー
上の絵は、メトロポリタン美術館版の4分の1のサイズです。
ローザ・ボヌール《馬市》1867年
水彩画バージョンです。