ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」はベラスケスの描いたマルガリータ王女のこと?超解説!

こんにちは!

今回は、ラヴェル作曲の『亡き王女のためのパヴァーヌ』についてです。

早速見ていきましょう!

亡き王女のためのパヴァーヌ

ディエゴ・ベラスケス《ラス・メニーナス(女官たち)》1656年

『亡き王女のためのパヴァーヌ』(フランス語: Pavane pour une infante défunte)は、フランスの作曲家モーリス・ラヴェルが1899年に作曲したピアノ曲、および1910年にラヴェル自身が編曲した管弦楽曲です。

優雅でラヴェルらしい繊細さを持つ美しい作品です。

上はピアノ、下はオーケストラバージョンです。

亡くなった王女の追悼ではない

パヴァーヌとは、16世紀から17世紀にかけてヨーロッパの宮廷で普及していた舞踏のことです。

原題のinfante défunteは文字どおりには「死んだインファンタ(スペインの王女の称号)」を意味し、韻を踏んだ表現が選ばれています。

ラヴェルによると、この題名は「亡くなった王女の葬送の哀歌」ではなく、「昔、スペインの宮廷で小さな王女が踊ったようなパヴァーヌ」という意味のつもりだったそう。

この古風な曲は、歴史上の特定の王女に捧げて作られたものではなく、スペインにおける風習や情緒に対するノスタルジアを表現したものです。

ベラスケスの「マルガリータ王女」

ディエゴ・ベラスケスとその工房《マルガリータ王女》1654年

諸説ありますが、ラヴェルがルーヴル美術館を訪れたときに見た、17世紀スペインの宮廷画家ベラスケスが描いたマルガリータ王女の肖像画からインスピレーションを得て作曲した、といわれています。

ベラスケスが描く絵の中で生き続けるマルガリータ王女の生涯とは?

2020.06.01

作曲したことを忘れても…

この曲は世間からは評価を受けたが、ラヴェルの周りの音楽家からはあまり評価されませんでした。

ラヴェル自身もこの曲に対して、「大胆さに欠ける」「かなり貧弱な形式」と批判的なコメントを行っています。

しかし、ラヴェルが晩年重度の失語症に陥った状態でこの曲を聴いた際、「美しい曲だね。これは誰の曲だい?」と尋ねたという逸話が残っています。

このエピソードがよりこの曲に哀愁を感じさせます。

ラヴェルば晩年、記憶障害や失語症など(正確には病状がわかっていない)で、段々と文字を書いたりスムーズに話せなくなっていきました。

病床にあって彼はオペラ『ジャンヌ・ダルク』などいくつかの曲の着想を得、それを書き留めようとしましたが、ついに一文字も書き進めることができなくなったと伝えられています。

あるときは友人に泣きながら「私の頭の中にはたくさんの音楽が豊かに流れている。それをもっとみんなに聴かせたいのに、もう一文字も曲が書けなくなってしまった」と呟き、

また別の友人には『ジャンヌ・ダルク』の構想を語ったあと、「だがこのオペラを完成させることはできないだろう。僕の頭の中ではもう完成しているし音も聴こえているが、今の僕はそれを書くことができないからね」とも述べたといわれています。

天才作曲家の最期を思うと、ますますこの曲が「今はもう無くなってしまった懐かしくて輝いていた記憶」を表しているような気がしてきます。

様々な映画に登場

紅の豚

ジブリの映画「紅の豚」の劇中で流れる「帰らざる日々」は「亡き王女のためのパヴァーヌ」をもとにジャズアレンジした曲です。

ダークナイト ライジング


ダークナイト ライジング (字幕版)

映画「ダークナイト ライジング」では、仮装舞踏会でブルース・ウェイン(バットマン)とセリーナ・カイル(キャットウーマン)が踊るシーンで「亡き王女のためのパヴァーヌ」がかかっています。