こんにちは!
今回は、マティスの「ジャズ」シリーズを紹介します。
早速見ていきましょう!
ジャズ
絵を描けなくなって…
マティスは晩年、腸の病気のためベッドで過ごすことが多くなりました。身体を思うように動かせなくなり、絵や彫刻を制作することができませんでした。
それでも彼の創作意欲は衰えることはありませんでした。
1943年頃から、彼は自分で塗った色紙を切り抜いて作品を作るという新たな技法を始めました。彼はこれを「色でデッサンする」と表現しました。
ジャズ音楽のような作品
1947年には、この技法で制作した切り紙絵20点をまとめた版画集『ジャズ』をテリアード社が出版しました。
この版画集は、マティスの使用したグワッシュ(不透明水彩絵具)とステンシル(形を切り抜いた型の上から刷毛やローラーで色を刷り込む技法)技法を用いて、原画に極力忠実な形で再現されています。
『ジャズ』の中に描かれているのは、サーカスや民話、旅行の思い出から取られたモチーフで、道化師や玉乗りをするゾウ、空中ブランコなどのサーカスのイメージや、狼、イカロスなどの童話や神話のキャラクター、そしてタヒチで見た礁湖のイメージなどが表現されています。
タイトルの『ジャズ』は、色と動きを自由に組み合わせて生み出された切り紙作品が、まるでジャズ音楽のような自由で即興的な表現をしていることから付けられたのでしょう。
『ジャズ』1947年
この作品のタイトル「Monsieur Loyal(ムッシュ ロワイヤル)」は、曲芸師を指すフランスのスラングで、ドゴール将軍(フランスの英雄。パリ=シャルル・ド・ゴール空港の名前は彼から)が描かれています。
この作品を上下逆にすると、口を大きく開けた剣を飲み込む人の絵に変わります。
サーカスの象が玉乗りもしくは台の上に乗って芸をしている様子が描かれています。
マティスはこの作品で、とらわれた象がジャングルに帰りたがっている様子を、苦悩を表す赤い炎で表現しているそう。
この『ジャズ』シリーズは戦争で人々が家族や愛する人と離ればなれになっていたときに制作したシリーズです。
右上の白黒が乗馬者、左下の黒緑が道化師、黄色いムチが曲芸師を表しています。
イカロスはギリシャ神話に登場するキャラクターで、翼をゲットして空を飛び、調子に乗って太陽に近づきすぎて羽根が溶けて墜落死してしまいます。
そんなイカロスは空中ブランコに例えられることもあります。
この作品では、サーカスの鮮やかなライトのもとで実演している様子にも、イカロスが海に落ちているようにも、銃で撃たれたようにも見えます。
『ジャズ』シリーズは一見明るくて派手な作品のように思えますが、葬式や剣、ナイフ投げの絵などから、彼の中の不安や心配などのイメージを感じられます。