フェルメール「眠る女」を超解説!誰かいたの?

こんにちは!

今回は、フェルメールの《眠る女》についてです。

早速見ていきましょう!

眠る女

ヨハネス・フェルメール《眠る女》1656-1657年

初の本格的風俗画

本作は、フェルメールが初めて室内の女性を描いた作品です。

この絵以前は、大型の物語画を描いていたためか、本作は後年の室内画よりもサイズが大きいです(87.6×76.5 cm)。

 

画中にあるライオンの頭部の飾りのついた椅子、東洋風の絨毯、白いワイン入れなどは、以後のフェルメールの作品にしばしば登場しています。

まどろむ女中に隠された意味

着飾った女中

 

女中が居眠りをしています。

17世紀の風俗画には、こういった召使が居眠りする姿が描かれることがあります。

(酒に酔って)眠っているということはつまり、家庭の主婦としての勤めをおろそかにしているということで、「怠惰」を戒める寓意画として描かれました。

2つのワイングラス

 

彼女が着飾っていること、テーブルの上にワイングラスが2つ(前景に倒れたグラス)とシワの寄ったテーブルクロスなどがあることから、先ほどまで誰かがいたことを暗示しています。

斜めになったイス

 

椅子が斜めに置かれていることからも、つい今しがたまで誰かがいたことを示しています。

フルーツボウル

 

テーブルの上の果物の陶器のボウルは「誘惑」の象徴です。

ナイフと水差し

 

また、ナイフと水差しは、交際以上の関係をほのめかすアイテムです。

壁の絵にはなんと…

 

彼女の背後の壁に掛けられた絵は、暗くてとても見にくいのですが、キューピッド(愛の象徴)の足元に仮面(虚り)が描かれています。

どうしてこの足だけでキューピッドだとわかるのかというと、他の絵にもたびたび登場しているからです↓

消えた

 

背後の開けっぱなしのドアの向こうには隣の部屋が見えます。

壁には鏡が掛けられていますが、実はもともとは…

X線写真

X線写真によると、絵のこの部分には1人の男と犬(性的なものを示唆する)が描かれていましたが、後に画家によって塗りつぶされたことが明らかになっています。

犬は、良い意味にも悪い意味にもあるのですが、「ばったりと出会った人物とのかりそめの関係」を示すような性的な意味で描かれることもあります。

これによって、フェルメールは道徳的な教訓を描いたわけではなく、眠っている女性のいる室内の静謐さと、光と質感を表現したかったことがわかります。