こんにちは!
今回は、ギリシャ神話に登場する農耕神サトゥルヌスを解説します。
早速見ていきましょう!
サトゥルヌス(クロノス、サターン)
ピーテル・パウル・ルーベンス《我が子を食らうサトゥルヌス》1636-1638年
ギリシャ名:クロノス、ローマ名:サトゥルヌス、英語名:サターン
アトリビュート:鎌、子供(を飲み込む姿)
世界を最初に統治したティタン神族で農耕神です。
ちなみに英語名「サターン(Saturn)」は、「悪魔」の意味のサタン(Satan)とはつづりも語源も違う、全く別の語です。
世紀の離婚劇
サトゥルヌスの母は大地の神ガイア、父は天空の神ウラノスでした。
ウラノスがガイアのお腹に子供たちを閉じこめたことに怒り、ガイアは未子のサトゥルヌスに大鎌を渡し、彼は兄弟と協力してウラノスの男性生殖器を切除しました。
ウラノスは痛みにうめきながら、大地から遠くへと蹴落とされ、子供たちはガイアのお腹から解放されました。
我が子を食べる
フランシスコ・デ・ゴヤ《我が子を食らうサトゥルヌス》1820-1823年
父親を蹴落としたサトゥルヌスは王の地位につき、兄弟たちと世を治めました。
ウラノスは息子たちを深く恨み、彼らを呪って「ティタン」と呼びました。
これは「(父の男性生殖器を)切り取った者」を意味します。
そしてサトゥルヌスに、「お前もいつか子供の1人に引きずり降ろされて痛い目に遭う」と警告しました。
サトゥルヌスは疑り深い性格だったため、今度は彼自身が、子供たちを飲み込み始めました。(ゴヤやルーベンスの絵では噛みちぎっていますがこれは演出です)
姉で妻のレアは、5人の子が飲み込まれるのを見ているしかありませんでした。
子供たち全員吐き出す
ゼウスを産んだレアは、もう夫に子供を飲み込ませないと決め、ゼウスの代わりに岩を産着に包みました。
サトゥルヌスは何の疑問も抱かずにそれを飲み込み、ゼウスは人知れず育てられました。
成長して思慮の女神メティスと結婚したゼウスは、父に吐剤を飲ませ、兄弟全員を吐き出させました。
兄弟は全員無事でした。
ゼウスだと思って飲み込んだ岩も出てきて、ギリシャ人はこれを「世界のへそ」としてデルポイに保管していたといわれています。
ゼウスは父から王座を奪い、2人の兄と共に世を治めました。
神としてはカリスマだった
王座を追われたサトゥルヌスは、2つの顔を持つヤヌスのもとに身を寄せました。
ヤヌスはサトゥルヌスに自分の子供を飲み込まれていたにもかかわらず、彼を高く評価していました。
というのも、サトゥルヌスの統治時代、社会は黄金時代を迎え、誰もが協調し完全な平等を享受していました。
ヤヌスは、幸せな時代を懐かしみ、サトゥルヌス祭を考えつきました。
毎年12月16日に開かれ、このときばかりは全ての作業がとまり、奴隷も主人も分け隔てなく楽しみました。
この祭りが、のちにキリスト教におけるクリスマスに受け継がれました。
不吉な名前
氷の輪を持つ不吉な土星にはサトゥルヌスという名がついており、占星術でも土星は凶兆とされています。
また、鉛中毒を欧米ではサトゥルヌスならぬ「サトゥルニズム」と呼びます。