こんにちは!
本日3月30日はゴッホの誕生日です。
日本でも1、2を争うほどの知名度と人気を誇る画家ゴッホと、映画『ジョーカー』のアーサーが重なって見えたことについての考察です。
目次
画家ゴッホとは
フィンセント・ファン・ゴッホ《自画像》
フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890年)はオランダの画家です。
激しい色彩と厚塗りの絵の具、そしてうねるような独特の筆跡が特徴です。
自分と同じ名前が刻まれた墓を見つける
父親は牧師で、毎週日曜日に父親の説教を聞きに教会へ通っていました。
ある日、少年ゴッホはこの教会裏の墓地に、自分と同じ名前の小さなお墓を見つけます。
実は自分が生まれる1年前同じ誕生日に生まれてすぐ亡くなった兄がいたことを知ります。
自分はその兄の変わりなんだ…だとしたら自分ってなに??存在意義ってなに??と悩み続けます。
癇癪持ちなゴッホは、周りとうまくやれず小学校も退学になり、隣町の寄宿学校へ通うことになります。
何もかも上手くいかない
画商で働いたり、無給で学校の教師として働いたり、牧師の手伝いをしたり、書店で働いたりします。
貧しい人や労働者のために働きたいという思いが強くなり、聖職者を目指しますが、試験は不合格。
その後伝道師を目指しますが、異常なほどのめり込んだゴッホは、貧しい坑夫たちに説教(宗教の教えを説き聞かせること)をするはずが、
自分も貧しい坑夫のようなボロボロの服を着て、同じような生活をして、彼らの心に寄り添おうとしました。
結果、何やってるんだよって話になり、伝道師の免許を取ることもできませんでした。
全てに絶望してお金も食べ物も泊まるところもないのに、旅に出てひたすら歩き回ったりしました。
そんな常軌を逸する行為が増えてきたゴッホの扱いに困った父親は精神病院へ入れようとしますがゴッホは大激怒。
その後は唯一の理解者弟テオの仕送りで生きる日々。
歪んだ恋愛感
フィンセント・ファン・ゴッホ《悲しみ》
ゴッホは周りとうまくやれない孤独感を癒すように娼館へ通うようになります。
しかもテオが送ってくれたお金を使って。告白を飛ばして急に結婚を申し込んだりするのは可愛いほう。
振られたのに家まで追いかけて、「ランプの炎に手をかざしている間だけでいいから、会って!!」と言ってみたり(過激なストーカー)、
子連れアル中の妊婦(どちらももちろんゴッホの子ではない)と結婚する!!と言って周りからドン引かれて、その後あっさり捨てたり。
ちなみにその女性を描いたのが上の《悲しみ》です。
隣の家の子と「結婚する!」親大反対で隣の家の子ゴッホの前で毒を飲んだり…
よりによってなんでその人を選ぶの?のオンパレード。
ゴッホは失恋するたびに仕事が全く手につかなくなります。女子か。
父親との絶えない喧嘩、そして死
フィンセント・ファン・ゴッホ《開かれた聖書の静物画》
真っ当な人間になって欲しかった父親と、異常行動が目立つゴッホとの喧嘩は絶えませんでした。
拗れ中年ニートと父親みたいな感じです。
そんな父親が発作を起こして急に死んでしまいます。
妹から「父親を苦しめて死なせたのはお前のせいだ!このままだと母親も殺される!出ていけ!!」と言われ、家を出ていくことに。
上の絵は父親の死後、父親の持っていた聖書を描いています。
火が消えて小さくなったロウソクなんて意味深…
唯一の理解者 弟テオの限界
フィンセント・ファン・ゴッホ《タンギー爺さん》
急にパリのテオのアパートに来たゴッホ。勝手に居候。
びっくりしつつも住まわせてあげるどこまでも優しいテオ。
今までのゴッホはとても暗い絵を描いていましたが、パリに出てきて印象派の画風に影響を受け、この時期から色彩がぐんと明るく鮮やかになります。
上の絵の、画廊を営むタンギーは、ゴッホのようなお金のない画家を支援するため、絵と交換で画材を提供していました。(優しい)
テオとの関係は悪化。テオは妹への手紙に「もう我慢できない。ゴッホには出て行って欲しい」と書いています。
そんな気持ちを察したのか、ある日突然ゴッホはテオのアパートを出ます。
耳切り事件
フィンセント・ファン・ゴッホ《黄色い家》
ゴッホは浮世絵にとてもハマっていて、日本への憧れが強かったこともあり、
アルルは南仏の日本!!と思い込んで、アルルへ。
ゴッホの夢と理想を詰め込んだ「黄色い家」で画家ゴーギャンと共同生活を送りますが、喧嘩になり、最終的に自分の右の耳たぶを切り落とします。
そしてその耳たぶを娼婦に渡しに行くという奇行は、新聞に「耳切り事件」として載ることに。
転がり続ける人生
フィンセント・ファン・ゴッホ《星月夜》
耳切り事件をきっかけに、頻繁に発作を起こすようになったゴッホ。
それを見た住人からゴッホを監視して欲しいという署名が集まり、病院に監禁されます。
ゴッホ自らサン・ミレ精神病院へ行くこと希望し、入院します。
上の絵もここで描いた作品です。
そこで絵を描き、病状が良くなってきたかと思いきや、
1年前に結婚したテオに子供が生まれたという現実に、パニックになるゴッホ。
その後も良くなったり、悪化したりを繰り返し、その合間合間に絵を描き続けました。
ある日テオからゴッホ宛に仕事や家族の体調などの悩みを書いた長文の手紙が届きます。
その後、テオに会いに行きます。
自分への援助や世話で、テオに本当に迷惑をかけていると悟ったゴッホ。
この訪問から1か月も経たない内に、ゴッホはピストルで胸を撃って自ら命を断ちます。
その半年後に、テオも後を追うように病気で亡くなっています。
死後にやっと得ることができた名声は、ゴッホたちにとって何の意味があったのでしょうか。
映画『ジョーカー』
ジョーカーという悪がどのようにして生まれたのか、アーサーの感覚を嫌でも追体験してしまう、そんな危険な作品です。
※映画『ジョーカー』のネタバレあります。
主人公アーサーは、コメディアンになることを夢見る派遣ピエロです。
わずかな仕事で生計を立て、母親と暮らしていました。
アーサーは脳と神経の損傷から、緊張すると所構わず笑ってしまうという病気を持っています。
不満が爆発する
小さな不満や不安を抱えて、それでも頑張って生きてきたアーサー。
ある事件をきっかけに、憎しみや悲しみ、そして疎外感を感じ、段々と歪んでいきます。
頑張っても報われない。
正直者が馬鹿を見る。
母親にとって自分は大切な存在ではなかったかもしれない。
心寄せていた女性と過ごした時間は全て自分の幻想だったと気づいた。
誰からも愛されていない。
そのことを知ってしまったアーサーは善悪のリミッターが完全に外れてしまいます。
ゴッホとアーサー
映画『ジョーカー』を見て、あぁこの孤独と劣等感と、疎外感…
自分に自信がないから、ピエロのメイクをしたり、周りを攻撃する感じ…
自分は誰からも愛されていないと心を閉ざす感じ…
誰かに否定されたことが忘れられず、自分を否定し続ける感じ…
いっぱいいっぱいになって、もうネガティブなことしか考えられないし、全てを悲観する感じ…
それとこの思い込みの激しさ…
ゴッホだ……
って思いました。
ゴッホも貧しい人を助けたいという気持ちが異常なほど強く、
アーサーは、自身が貧しい環境にいて、そんな貧しい人々が、アーサーを崇拝していく感じ、
2人は違うけど、なんか近いなって。
2人には何が見えていたんだろう。
もしかしたら、見えていたものが近かったんじゃないかなってゴッホの誕生日にふと思いました。