こんにちは!
今回は、アーサー王伝説に登場するアーサーの姉モルガンについて解説します。
早速見ていきましょう!
モルガン・ル・フェイ(モーガン)
アーサーの姉であり最大の敵
ウィリアム・ヘンリー・マーゲットソン《『アーサー王とその騎士の伝説』の挿絵「彼女は尼僧院で育てられている間に魔法を学んだことで知られていた」》1914年
モルガン・ル・フェイは、アーサー王の異父姉で邪悪な魔女です。
ル・フェイというのは「妖精」という意味です。
黒魔術で、何度も何度もアーサーたちの行く手を阻みます。
アーサー、実姉とは知らずに求愛
ジョン・ロダム・スペンサー・スタンホープ《モルガン・ル・フェイ》1880年
王となったアーサーを快く思わない人々の中にロット王がいました。
彼はモルガンと結婚しており、彼女をスパイとしてアーサーのもとに送り込みました。
モルガンの美しさにメロメロになってしまったアーサーは、実の姉とも知らず「どうか一緒に寝てほしい」と懇願し、2人の間にはモルドレッドという子供まで生まれています。
アーサーは、この後モルガンが実の姉だったと気づきますが、時すでに遅し…。
騎士アコロンに惚れ込む
エドワード・バーン=ジョーンズ《モルガン・ル・フェイ》1862年
アーサーの部下である騎士アコロンは、モルガンの恋人でした。
モルガンは、彼をとても愛していたので、夫(※)とアーサー王を殺して、彼を王にしたいと考えていました。
(※アーサー王伝説は様々な物語の寄せ集めなため、辻褄が合わない部分が多々あります。上ではモルガンの夫はロット王だと書きましたが、この物語ではウリエンス王です。)
そこであることを思いつきます…。
ある日、アーサー王は、ウリエンス王、アコロンと狩りに出かけました。
しかし急に乗っていた馬が死んでしまいました。
仕方なく3人は歩くことにしましたが、いつの間にか夜になってしまいました。
スピード・ランスロット《『アーサー王とその騎士団の伝説』の挿絵「12人の美しい乙女が現れ、アーサー王に敬意を表した」》1912年
大きな川を見つけた彼らのもとに、とんでもなく美しいの船がすべるように近づいてきました。
誰かいないかとその船に乗り込むと、12人の愛らしい乙女が出てきて、彼らを歓迎し、手厚くもてなしました。
疲れ切っていた彼らはそこで、一晩中ぐっすりと眠りました。
しかし、朝になって目が覚めてみると、彼らは全く違った場所にいました。
ウリエンス王は、自室のベッドの上、妻のモルガンの腕の中でした。
アコロンは、草原の中で目覚め、モルガンから本物のエクスカリバーとその鞘を受け取ります。
アーサー王は、とある城の大きな暗い部屋に閉じ込められていました。
アーサーがここから出る唯一の方法は、一騎討ちに出場することでした。
それを承諾し、モルガンから偽物のエクスカリバーとその鞘を受け取りました(アーサーは本物だと信じてる)。
実は一騎討ちの相手はアコロンでした。
お互いに誰なのかはわからず、2人は戦います。
エクスカリバーを持ったアコロンが優勢、血だらけな自分に気付いて持っている剣とその鞘(鞘には不死の力がある)が偽物だと気付くアーサー、アーサーの駄剣が折れて絶体絶命のピンチに。
これで終わりかと思いきや、アーサーがエクスカリバーを奪還し、アコロンに止めを刺そうとしたそのとき、相手が自分の仲間の誰かなのではないかと気付き、問いただしたところ、彼がアコロンだったということ、2人ともモルガンに騙されていたことを知り、試合は中止になりました。
しかしアコロンは数日後に死んでしまい、アーサーはその死体をモルガンのもとに送りました。
この間、モルガンは何をしていたのかというと、ウリエンス王を殺そうとしていました。
しかし間一髪のところで息子のユーウェインが止めに入りました。
モルガンは「悪魔にそそのかされたの。許しておくれ」と猫をかぶり、ユーウェインも母を許し、一件落着(?)。
ウィリアム・ヘンリー・マーゲットソン《『アーサー王とその騎士の伝説』の挿絵「モルガン・ル・フェイ」》1914年
そして、そんなモルガンのもとに、アコロンの遺骸が届きました。
伝言役の騎士が「今回の反逆行為は、必ず厳しく罰する。どこへ逃げても必ず見つけだすぞ」というアーサーの言葉を彼女に伝えました。
ハワード・パイル《『アーサー王とその騎士の物語』の挿絵「女王モルガン・ル・フェイ」》1903年
モルガンは「あらやだ、騎士さまったら弟がそのように伝えなさいと言ったからって、それをまともに信じてしまうなんて…!わたしがどんな顔をするだろうと、冗談でやったこと、すべて戯れごとですわ」と言いました。
この言葉を騎士たちは(なぜか)信じ切ってしまいます。なぜ…チョロすぎでは…。
そしてこの後もモルガンの悪巧みは続きます…。
エクスカリバーの鞘を盗む
アーサー・ラッカム《『アーサー王のロマンスと円卓会議の騎士団、マロリーのアーサー王の死から要約』の挿絵「モルガン・ル・フェイ女王がアーサーから鞘を盗んだ方法」》1917年
モルガンはエクスカリバーを盗みだそうと思い、アーサーの寝室に忍び込みました。
アーサー・ディクソン《『アーサー王と円卓の騎士』の挿絵「彼女はその場所から鞘を奪った」》1921年
アーサーはぐっすりと眠っていましたが、肝心のエクスカリバーを右手に握りしめて眠っていたため、彼を起こさずに取れそうにありませんでした。
ウィリアム・ヘンリー・マーゲットソン《『アーサー王とその騎士の伝説』の挿絵「モルガン・ル・フェイ女王が鞘をとった」》1914年
そこで仕方なく、エクスカリバーの鞘を盗みました。
アーサーはこの鞘が無くなると、不死の力を失うことになります。
目が覚めて、鞘が無くなっているのに気がついたアーサーは、見張りたちにキレます。
しかし、彼らはアーサーの姉に逆らうことは身分的にできないため、どうしようもなかったと言い訳をします…。
アーサーは急いでモルガンを追い、彼女を見つけました。
ヘンリー・ジャスティス・フォード《『ロマンスの書』の挿絵「モルガン・ル・フェイが鞘を捨てる」》1902年
モルガンは「我が身がどうなろうと、この鞘は渡すものか」と、えいと鞘を深い湖に投げ込みました。
ハワード・パイル《『アーサー王とその騎士の物語』の挿絵「モルガン女王はエクスカリバーの鞘を失う」》1903年
そして、大きな石がごろごろ転がっている谷間へ逃げ、魔法で人馬含めて家来ともども大理石に化けました。
アーサー・ラッカム《『アーサー王のロマンスと円卓会議の騎士団、マロリーのアーサー王の死から要約』の挿絵「彼女が追い抜かなければならないとわかったとき、彼女は大きな大理石に魅了されて、自分自身、馬、そして人間を形作りました」》1917年
彼女を追ってきたアーサーは、この大理石を見つけました。
そこには石に嵌め込まれたモルガンたちの姿がありました。
アーサーは「あぁ、神が罰を下されたのだ。このような事態となって残念だ」と嘆き悲しみました。
姉は魔女なのだから、どうして魔術かもしれないと思わないのでしょうか。チョロすぎるな…。
アーサーは鞘を探しましたが、見つけることができず、帰っていきました。
アーサーがいなくなると、モルガンは皆を元通りの姿に戻しました。
魔法のマントのプレゼント
フレデリック・サンズ《モルガン・ル・フェイ》1864 – 1864
アーサー王のもとにモルガンの使者の乙女が、世にもきらびやかなマントを持ってやって来ました。
乙女は、「モルガンさまより王さまにこのマントを、とのことです。お怒りの件については、王さまのお望みに従ってつぐないをいたしますとのことです」と言いました。
アーサーはこのマントを気に入りましたが、すぐには返事をしませんでした。
そこへ湖の乙女がやって来て、「このマントを決して身につけてはなりません。家来の騎士にもです。まずはそれを持って来た者に着てみるようお命じください」と言い、アーサーはその助言に従いました。
そしてモルガンの使者に着るよう命じると、「王さまの衣装が私に似合うわけがない」などと渋り始めたので、無理やり着せたところ、その瞬間に乙女は死に、ばたりと倒れたかと思うと、紅蓮をあげて燃え上がりました。
アーサーのモルガンに対する怒りはますます大きくなり、彼女を宮廷から永遠に追放しました。
アーサーの最期に付き添う
エドワード・バーン=ジョーンズ《アヴァロンのアーサー王の眠り》1881-1898年
数々の悪事を働き、アーサーが死ぬ原因(不死の力のある鞘を盗んで捨てた)を作ったのは、モルガンでしたが、最後の最後になって良いキャラになります。
フランク・ウィリアム・ワーウィック・トップハム《アーサー王とモルガン・ル・フェイのアヴァロンへの航海》1888年
というよりも、元々は良いキャラだったはずが、『アーサー王伝説』はいろんな物語の寄せ集めのため、いつの間にか悪女として描かれるようになっていったというのが本当のところなよう…。
ジェームズ・アーチャー《アーサー王の死》1860年
カムランの戦いで重傷を負ったアーサーの傷を癒すため、3人の王妃(その中の1人がモルガン)が、妖精の国アヴァロン島へ彼を連れて行きました。
アーサー王は、アヴァロンの地で息絶えたとも、傷を癒した王は、いつの日か目覚めて帰ってくるとも言われています。