万博イタリア館の美術作品を超解説!カラヴァッジョにミケランジェロにダ・ヴィンチの作品もある?

こんにちは!

今回は、大阪・関西万博2025 イタリア館に集結するアート作品を紹介します。

早速見ていきましょう!

イタリア館

イタリア館は「Art Generates Life」を掲げ、古代ローマの《ファルネーゼのアトラス》からレオナルド手稿、最新インスタレーションまで一挙公開!

芸術・科学・技術を融合し、過去-現在-未来の“生命力”を体感できるタイムカプセル空間です。

目玉はカラヴァッジョ《キリストの埋葬》やファルネーゼのアトラスなど、名品ぞろいです。

1. ファルネーゼのアトラス

出典 : Museo Archeologico Nazionale di Napoli『Collezione Farnese』

世界最古の星座球”を背負うタイタン像。

頭部をのぞき込むと肩越しに星座が読める。右斜め前から撮影すると筋肉と天球がバランス良く収まる。

1. 基本データ

作品名ファルネーゼのアトラス(Atlante Farnese)
制作年代2世紀中頃(アントニヌス朝)
素材大理石
サイズ高さ約1.9 m、重さ約2 t
所蔵ナポリ国立考古学博物館(MANN)
サローネ・デラ・メリディアーナ中央展示
コレクション1562年に枢機卿アレッサンドロ・ファルネーゼが255スクードで購入

2. アトラスってどんな神?

  • ギリシア神話の巨神タイタン族。
  • ゼウスに反逆した罰として天空を支える役目を課せられた。
  • 「重荷に耐える者」という語源から、英語の “atlas(地図帳)” もこの神に由来。

3. 見どころ①──アトラスの必死さ

像を一周すると、力みすぎて食いしばった表情盛り上がる筋肉がよく分かります。左肩から垂れる分厚いマントまでもが重さを強調し、見ているこちらの肩も凝りそうです。彫刻のポーズはローマ人が愛した“ヒーローの苦闘”そのもの。

4. 見どころ②──石に刻まれた星空

天球の直径は約65 cm。厚さ6 mmほどの浅浮彫で、

  • 41〜42の星座
  • 黄道十二宮
  • 天の赤道・黄道・子午線(コルーリ)

がびっしり刻まれています 。古代でここまで詳細な星図は超レア。17世紀の天文学者カッシーニやビアンキーニも、この球体を観察して星座の位置を検証したほどです。

豆知識
球のてっぺんに大きな穴が開いているのは、昔に日時計(グノモン)を差して“巨大な石の腕時計”にしていた可能性があるから、らしいです。

5. なぜ“唯一無二”と言われるの?

  1. コピーがない
    同じサイズ・同じ図柄の複製が確認されておらず、現存はこの一体のみ。
  2. 芸術×科学のハイブリッド
    迫真の人体表現と、当時最先端だった天文学知識が一つの彫刻で味わえる。
  3. 歴史を動かしたスター像
    16世紀以降、星図や天球儀のデザインモデルとしてヨーロッパ各地で研究対象に。

6. 裏話

  • ヒッパルコス説
    天球に描かれた星座の位置が、紀元前129年ごろの星表と近いという研究があり、元モデルは失われたヘレニズム期の青銅像だった可能性が高い。
  • ローマ皇帝のプロパガンダ?
    「帝国を背負う皇帝の苦労」を象徴する図像として、アントニヌス朝の公共施設に置かれたという説も。

2. カラヴァッジョ《キリストの埋葬》(1603–04)

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ《キリストの埋葬》1603-1604年

石板の角とニコデモの肘が鑑賞客側へ突き出す“飛び出し効果”は、真正面よりやや左寄りがベストポジション。

1. 基本データ

作品名キリストの埋葬(伊 Deposizione/英 The Entombment of Christ)
制作年1603–1604年頃
技法カンヴァスに油彩
サイズ高さ300 cm × 幅203 cm
現在地バチカン美術館 絵画館(元の礼拝堂には複製)
依頼者ジローラモ・ヴィットリーチェ(キエーザ・ヌオーヴァの「ピエタ礼拝堂」用)

2. どんな場面?

  • 十字架から降ろされた直後のキリストを、ニコデモとヨハネが石板(「終油の石」)に載せる瞬間。
  • 背後には嘆き悲しむ3人のマリア
    1. クロパの妻マリア(両腕を天に)
    2. マグダラのマリア(ハンカチで涙を拭く)
    3. 老いた聖母マリア(尼僧服で祈りの姿)
  • 題名は“埋葬”でも、実際は香油を塗る儀式の前段階を描く。

3. 見どころはここ!

V字に落ちる“光のナイフ”

カラヴァッジョ得意のキアロスクーロ(強烈な明暗対比)。暗闇から切り取られるように人物の顔や手が照らされ、視線が自然とキリストの遺体へ導かれます。

力学的バランス

  • キリストは静かに水平。
  • それを支える2人の男は不安定な体勢で必死。
  • 安定と不安定の緊張感が、画面にドラマを生みます。

石板のシンボリズム

  • 石は「隅の親石」=キリストが教会の土台になることを暗示。
  • 祭壇正面に掛けられていたため、ミサで掲げられる聖体と絵のキリストが重なり、「これは私の身体である」という教義を視覚化しました。

4. 制作&その後の運命

  1. 1602年ごろ依頼 → 1603–04年完成。
  2. キエーザ・ヌオーヴァの第2礼拝堂に設置。
  3. 1797年 ナポレオン軍によりパリへ移送、ルーヴルで約20年展示。
  4. 1816年 返還され、現在はバチカン美術館が所蔵。礼拝堂には精巧な複製が残る。

5. 後世へのインパクト

  • ルーベンスダヴィッドが模写・引用。
  • セザンヌ、ジェリコー、フラゴナールらも研究対象に。
  • 暗闇から浮かび上がるリアリズムは、バロックから近代へ続く光と影の表現に大きな影響を与えました。

3. ミケランジェロ《キリストの復活(第一稿)》

出典 : L’ITALIA A EXPO 2025 OSAKA『アート作品とインスタレーション』

1. 基本データ

作品名キリストの復活(Cristo risorto/Cristo della Minerva〈初稿〉)
制作年1514–1516年にミケランジェロが着手1618–1619年ごろ若きベルニーニ(と伝わる彫刻家)が仕上げ
素材・サイズカッラーラ産大理石、高さ約2.05 m
現所蔵バッサーノ・ロマーノ(ラツィオ州)サン・ヴィンチェンツォ・マルティーレ教会
日本公開2017年(東京)に続き、2025年大阪・関西万博で2度目

2. どうして“幻”なの?

  • 黒い筋事件
    顔の大理石に黒いスジが出現し、ミケランジェロが制作を放棄。
  • 庭に放置→行方不明
    依頼主メテッロ・ヴァリの邸宅庭園に置かれ、その後市場に流出。17世紀初頭には“作品迷子”状態。
  • ベルニーニが救出?
    1618–19年頃、若きベルニーニが右手や顔を整え、像を完成させたと推定。
  • 教会で再発見(1997年)
    ラツィオの小さな村サン・ヴィンチェンツォ教会で“失われたミケランジェロ”と確認され、世界的話題に。

3. 像の見どころ

復活のパワーポーズ

  • 右手:大きな十字架+磔の縄を力強く抱える。
  • 体の傷:釘跡のある手・槍傷の胸が、受難→復活のストーリーを物語る。
  • 生々しい肉体:若いキリストの引き締まった体は“死を克服した完全な肉体”を象徴。

黒い筋とベルニーニのタッチ

  • 左頬にうっすら残る黒い筋が“幻の理由”そのもの。
  • 仕上げた彫刻家はベルニーニ説が有力。顔や右手の繊細さに、バロック的な動きが加わっていると言われる。

ミケランジェロらしい“ねじり”

  • ゆるやかなS字カーブと、片膝を緩めたポーズで“動き出す直前”の緊張感を演出。

4. 数奇な旅路タイムライン

年代出来事
1514ローマ貴族ヴァリが「十字架を抱くキリスト像」を注文
1516頃黒い筋が発覚 → ミケランジェロ制作中止
1522未完成像が依頼主の庭へ移動
1607美術市場に出現、売却
1618–19別の彫刻家(ベルニーニか)が仕上げ
1644サン・ヴィンチェンツォ教会へ奉納
1997学術調査で“ミケランジェロ失われた第一稿”と認定
2017東京で初の国外公開
2025大阪・関西万博で2度目の日本公開

4. ドメニコ・ティントレット《伊東マンショの肖像》(1585)

ドメニコ・ティントレット《伊東マンショ》1585年

技法・サイズ 油彩/カンヴァス 54 × 43 cm
所蔵 ミラノ トリヴルツィオ財団

みどころ

  • 異国情緒ある黒い瞳とレース襞の巨大なラフ
  • 16歳の少年がスペイン流行の銀糸入りダブルト(スペイン宮廷風の上着)で堂々とポーズ。

背景・豆知識

  • 1585年、ヴェネツィア元老院が「天正遣欧少年使節」を記念する集団肖像画を依頼──本作はその“下絵”として急写されたと考えられる。
  • その後計画は頓挫し、キャンバス単体で残存 → 2014年再発見。

5. レオナルド《アトランティック手稿》

1119枚の天才のノートから素描4点が来日、2枚ずつの展示。鏡文字メモと発明スケッチの共演。

みどころ

  • 鏡文字メモと精緻な線描が同居。レオナルドの思考の速さが紙面に残る。

背景・豆知識

  • 名は大型帳簿(アトラス)に綴じ変えられたことに由来。
  • 光劣化を避けるため照度50lx以下+短期展示を徹底。

6. アルトゥーロ・フェラリンの飛行機(SVA9型機再現)

出典 : L’ITALIA A EXPO 2025 OSAKA『アート作品とインスタレーション』

1920年ローマ→東京18,000 km飛行の木骨構造を“裸”展示 持続可能素材×航空史ロマン。

7. ヤゴ《循環器系》

出典 : L’ITALIA A EXPO 2025 OSAKA『アート作品とインスタレーション』

30個の白いセラミック心臓がCO₂データで鼓動 “命のリズム”をリアルタイムで体感。

8. フランチェスカ・レオーネ《No Name》

出典 : L’ITALIA A EXPO 2025 OSAKA『アート作品とインスタレーション』

酸化鉄板を折り曲げた廃材を“記憶の花”へ転生。

9. オリアナ・ペルシコ《pneumOS》

出典 : L’ITALIA A EXPO 2025 OSAKA『アート作品とインスタレーション』

空気質データを音・光・味覚に変換する呼吸インスタレーション。都市の“息づかい”を五感で可視化。

10. 隈研吾×ガラス工房サルヴィアティ《dieXe》

出典 : L’ITALIA A EXPO 2025 OSAKA『アート作品とインスタレーション』

ムラーノガラスの10片モジュール照明。ガラス格子が天井に木漏れ日を描く。

11. ジュリオ・チンティ《カノポ》

出典 : L’ITALIA A EXPO 2025 OSAKA『アート作品とインスタレーション』

玄武岩繊維を使用したエポキシ樹脂の彫刻+木製噴水。夏の大三角の星座に着想を得て作られた作品。

オルフェウスとエウリュディケの神話と日本の織姫と彦星の伝説をミックスした彫刻。

夜間、水面に夏の大三角が反射。

12. ボッチョーニ《連続性の中の唯一の形態》

出典 : L’ITALIA A EXPO 2025 OSAKA『アート作品とインスタレーション』

1913年未来派の疾走する人体ブロンズ。芸術・工学・科学の融合を象徴する作品です。

13. 2026年ミラノ・コルティーナ冬季オリンピック 聖火トーチ

出典 : L’ITALIA A EXPO 2025 OSAKA『アート作品とインスタレーション』

建築家カルロ・ラッティのデザインです。世界初公開だそう。