両面に絵?超豪華な祭壇画ドゥッチョ「マエスタ(荘厳の聖母)」を超解説!

こんにちは!

今回は、ドゥッチョの《マエスタ》を解説します。

早速見ていきましょう!

マエスタ(荘厳の聖母)

両面に描かれた豪華な祭壇画

ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ《マエスタ(荘厳の聖母)》1308-1311年頃

3m以上あるとても大きな作品です。

中央の絵だけで2m以上あります。すごすぎる…。

ドゥッチョの真作だと絶対的に確実に証明されているのは本作のみです。

1311年に完成した祭壇画は、それを祝賀する大行列で大聖堂へ運ばれました。

しかし、1771年にバラバラになってしまい、一部は紛失し、売却され、各地に散ってしまいました。

なんとこの祭壇画、にもぎっしり絵が描かれています!

 

もうすごすぎません?

細かく描き込まれていて、ワクワクしちゃいます。

写真で見ると巨大なドールハウス覗いてるみたいな感覚。(笑)

あまりにも贅沢すぎる

ドゥッチョがシエナ市当局から祭壇画の制作を委任されたことが、現存している1308年の契約書から判明しています。

その契約書を見ると、このプロジェクトがいかに贅沢なものであったかがわかります。

例えば、芸術家が必要とする材料は全てパトロンが提供すると誓約していることなど。

そのため、聖母マリアのローブはウルトラマリン(アフガニスタンの採石場でしか採取できないラピスラズリから調合される、希少で高価な純粋な青い顔料)で描かれています。

中央パネル

 

聖人と天使に囲まれ、天の宮廷の王座についているのは聖母子です。

シエナの4人の守護聖人が慈愛を請うようにマリアの足元にひざまずいています。

これは、聖母がシエナの後援者および守護聖人として公式に使命されていたからです。

聖母の王座の下の銘には、「聖母マリアよ、シエナに平和を与えたまえ」と刻まれています。

聖母子

 

聖母は「天の女王」であり、「母なる教会」を人格化した象徴でもありました。

通常の中世の習慣に従って、聖母は重要性を強調するために他の人物像より大きく描かれています。

マントの星は、東洋の特徴でもあり、聖母の称号である「海の星」を言及しています。

天使

 

 

聖母を囲む天使たちは、みな同じような、理想化された顔で描かれています。

天使には男女の区別がないので、画家は両性に見えるように常に苦心して描きました。

聖アンサヌス

 

前景で聖母の前にひざまずく4人の人物は、シエナの守護聖人アンサヌス、サヴィヌス、クレシェンティウス、ヴィクトルです。

彼らが目立つ位置に配置されていることから、この祭壇画が宗教画であると同時に、市民のための依頼作だったことがわかります。

上の人物は聖アンサヌスで、貴族的な服装が示すように、彼はローマの貴族出身でしたが、福音を説いたことについて父親に裏切られました。

アンサヌスは、ディオクレティアヌス皇帝によって死刑を宣告され、油の沸騰した樽に投げ入れられ、その後、首を切られました。

洗礼者ヨハネ

 

荒んだ外見と動物の皮でつくられたチュニックから洗礼者ヨハネだとわかります。

ヨハネは、イエスが出現する前兆という立場のために、「天の宮廷」を描いた多くの絵画に登場しています。

さらに彼は、二部構成の聖書の間をつなぐ象徴、つまり『旧約聖書』の最後に出てくる預言者であり、『新約聖書』の最初の聖人であると見なされていました。

また、この種の絵に登場する人物は、意図的に堅苦しい固定のスタイルで描かれてきましたが、この絵を見てもわかるように、徐々に「自然な交流」が描かれるようになりました。

何列も同じような人物像を繰り返すのではなく、ドゥッチョは場面にある程度の多様性を導入し、聖人や天使が互いに目配せをし、心を通わせているように描きました。

聖アグネス

 

聖アグネスは、ディオクレティアヌス治世中に殉教させられた、多くのクリスチャンのうちの1人だったローマの処女です。

彼女は伝統的なアトリビュートである若い子羊を持っています。

その由来は、おそらく彼女の名前と似ているため(agnusはラテン語で「子羊」という意味)だと考えられています。

アグネスはおそよ13歳の少女でしたが、高官の好意を拒絶したために娼家に送られました。

奥行き

 

 

ドゥッチョの時代は、まだ遠近法がありませんでした。

しかし彼は、聖人らが立っている台の端に掛かっている足とマントを何か所か描くことで。この絵に奥行きの感覚を生み出すことを試みています。

さらにこの部分は、台の側面に記されたあまり知られていない数人の聖人の名に注意を引く意味もありました。

裏側

この絵の裏側には…

 

中央上を見て分かる通り、キリストの物語が描かれています。

下から時系列に物語が進んでいきます。

下の左から2番目は最後の晩餐のシーンですね。